ことしは春が早く、3月25日の卒業式には、桜のつぼみが膨らみかけていました。そのつぼみがいっせいに開き、入学式には、六甲台はもうほとんど花盛りになりました。いよいよ花の新学期です。ことしも元気で、また楽しく頑張りましょう。
在外研究にため、4月21日に関西空港を発ち、シアトル経由で、オレゴン大学に向かいます。アメリカの最新の環境において実証的な会計学の研究をつづけるのが主目的ですが、インターネット、イントラネットについても大いに勉強してきたいと思っております。期間は半年で、今年の9月末には、リフレッシュして帰国します。10月から研究室、教室などでみなさまと再びお会いできることになります。
15年前の1981年に、カナダのバンクーバーにあるUBCに1年間滞在し、客員研究員として、エキサイティングな研究生活をすごしました。すでに50代の半ばに達し、エネルギーはかなり低下しましたが、その頃の熱い思いが、少しですが、よみがえってきます。オレゴンでは、最初は単身で生活しますが、夏休みには、妻とこどもたち3人がジョインしますので、にぎやかになるはずです。オレゴンのユージンは風光明媚で、気候も温暖なところと聞いていますので、週末には、軽旅行、ゴルフ、テニスなども大いに楽しみたいと思っています。
今回の出張ではやや強力なノートパソコンを携行しますが、スタンドアロンとして利用するほか、ネットワークの端末としても活用したいと考えています。到着後すぐにネットワークの足場を確保して、この「財務会計ラボ」にアクセスを試みますが、それだけでなく、できれば太平洋の向こう側から、FTPでファイルを転送し、定期更新をつづけたいと思っています。この点でも頑張ってみたいと思いますので、ご支援をお願いします。
オレゴンにおける住所、電話番号、Email-addressは未確定です。ただし、オレゴン大学の所属学部、アドレスは次のようになっています。
Department of Accounting
Charles H. Lundquist College of Business
University of Oregon
Eugene OR 97403-5209
USA
六甲台の実習用コンピュータが一新され、新しいOSとして、強力なWindows NT 4.0が採用されました。また、学生全員に電子メールのアドレスが渡されましたので、ネットワークの体制も大幅に整ってきたことになります。パソコンの台数はまだ少ないとはいえ、昨年に比べると、学生のコンピュータ環境は格段に高度化されたことになります。関係者のご尽力に敬意を表します。
この新環境にあわせ、これからのコンピュータ教育の在り方が、教官の間で、熱い議論を呼んでいます。ゼミ生などをみるかぎり、ワープロに親しんでいる学生はごく少数です。インターネットを使っている学生となるとさらに少なく、なおも貴重な存在といえそうです。高校段階でのコンピュータ教育が不十分で、大学でも情報リテラシーから手をつけなければならない状況にあります。この現実を踏まえて、どのように大学の専門教育を展開するかが悩みなのです。
この数年の間に、ハードもソフトも激しく変わりました。この変化によって学ぶ側も負担が増え、2−3日の講習ぐらいでは、とてもコンピュータを扱えるようにはなりません。他方、教える側も負担が急増し、技術も教材も追いつかなくなっています。教育にコンピュータを導入すると、体力も消耗して、教官はフラフラになってしまいます。
しかし、いま手を緩めることは遅れることを意味します。苦しくとも、この「戦争」に立ち向かう必要があります。レフレッシュ期間中に、ビジネス教育、会計教育という次元で、この問題をもう一度冷静に見つめてみたいと考えています。
会計制度についての記事が新聞に載るのは、かつてはごくまれなことでした。ところが、最近では、会計についての記事が、異様といってよいほど頻繁に新聞にでています。これは、日本の会計制度が、いま曲がり角に立っている兆候といえるでしょう。
アメリカでは、毎年多数の新会計ルールを制定し、時代の変化に敏速に対処してきました。この点はEU諸国でもほぼ同様で、時代の流れに柔軟に適応してきたように思えます。しかし、わが国では会計制度のアップデートが放置されてきたために、アチコチで綻びが目立つようになっています。第二次大戦後に確立された古い会計システムが、そのままの形で生き残ってしまったのです。これでは、国際化にとても対応できません。
会計ルールというのは、数字のまとめ方を決めたものでしかありません。この会計ルールを議会が決議し、政府が管理するというのでは、大がかりにすぎて、柔軟性が失われます。あまりにも硬直的で、ビジネスの変化に柔軟に対処することができないのです。何もかも法案にまとめるという法定主義を見直す必要があります。またデレギュレーションの動きにそって、政府の役割を縮小することも大切になってきます。
わが国には、会計ルールを設定する機関として「企業会計審議会」があります。しかし、これは大蔵大臣の私的諮問機関にすぎず、会計ルール設定主体として十分に機能しているかどうか疑いがあります。場当たり的で、後追いの対処しかできていないのが実状といえそうです。
日本の会計制度について根本的に再検討するのであれば、まず議会による法定主義を再検討し、この企業会計審議会の在り方を変える必要がありそうです。
次回のバージョンアップは6月中旬を予定しています。アメリカからの遠隔操作になりますので、多少の不安が残りますが、トライしてみたいと思います。ただ、もしうまくいかないとすれば、更新は帰国後の9月まで遅れることになりますが、その際にはお許しください。
みなさまのご健勝とますますのご活躍をお祈ります。
1997年04月10日
「神戸大学財務会計ラボ」Web-master 岡部 孝好