A Message from Webmaster to New Version(June 08, 1999)

1999年06月版へのメッセージ



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◆梅雨◆

 いよいよ梅雨の季節を迎えようとしています。六甲台のキャンパスには若葉が生い茂り、高い楠の枝先をま白い花が覆い尽くしています。いつものご来訪ありがとうございます。またも更新が遅れて、申し訳ありません。

◆ついに研究室にWWWサーバーを導入◆

 この「神戸大学財務会計ラボ」が立ち上がったのは、震災の年1995年です。当時、六甲台キャンパスで動いているWWWサーバーは1台もなく、ホームページもこのラボのものと六甲台図書館のものだけでした。

 1995年の夏、ホームページの開設は準備したもののWWWサーバーがなく、総合情報処理センターに泣きつき、そのサーバーを借りることになりました。以来ほぼ4年もの長きにわたって、総合情報処理センターのUNIXマシンをプラットフォームに、インターネット・コミュニティに情報発信を続けてきたわけです。「いずれは自前のサーバーから」と考えてきましたが、資金的にも時間的にもその余裕がなく、総合情報処理センターのお世話になりっぱなしになりました。

 この2月になって研究室にサーバーマシンを導入することを決め、NEC Express Srever 5800/110Laを購入し、かなり苦労しながらも、自力でWindows NT Ver.4.0 (service pack 4)をインストールしました。設定とテスト運用にずいぶんと日時を費やしましたが、連休明けより本格運転に移行し、現在では研究室のサーバーからこのホームページを提供しています。わたしにとっては、永年の夢の実現です。

 サーバーマシンの名前は「wildpig」ですが、この名前はときどきキャンパスで顔を合わせるイノシシにちなんだものです。新しいアドレスは「http://okbhome.b.kobe-u.ac.jp/」として登録されています。すでにブックマークにご登録いただいているはずですので、この新アドレスへ変更をお願いします。ブックマークの変更の方法についてはガイドを用意しています。

◆「売上仕入れ」◆

 会計用語として、「売上」もあるし「仕入れ」もあるが、2つが合体した「売上仕入れ」という会計用語はない。ところが、ある種の業界では「売上仕入れ」という言葉が日常的に使われている。

 「売上仕入れ」というのは、「商品を販売した時点において商品を仕入れたとみなす」ということ、いい換えると、「販売するまでは商品を仕入れなかったとみなす」ことを指す。販売できたものだけが仕入れたとみなされるから、販売待ちの在庫もないし、売れ残りも出ない。

 この「売上仕入れ」の理論的な意味みついては、神戸大学経営学部のディスカッションペーパー「日本の卸・小売企業における裁量的な売上計上」に詳しく論じておいた。ご関心の向きは、ご検討をいただきたい。

◆電子入札システム◆

  インターネットが普及して、電子入札システムを採用する会社が増えています。買いたい物品のリスト、仕様、品質、数量、納期などをインターネット上に公開し、インターネットを通じて入札を受け、最安値の応札者をシステムで選択し、発注手続きをシステムですすめるというものです。いくつかのメリットがあります。

  (1) 世界中で一番安い売り手から資材、部品、用品を調達でき、製品市場においてコスト優位に立つ。

  (2) 売り手の間における競争が激しくなって、売り手側においてコストダウンがすすむ。

  (3) 調達担当者の情実が排除され、購買条件がクリアになる。

  (4) 国際取引が増加し、「日本企業は閉鎖的」という海外の批判をかわすことができる。

  (5) 調達事務が簡略化され、間接部門において省力化、コストダウンが達成される。

 この電子入札システムは、「安ければ、どこの、誰からでも買う」というものですから、オープンな調達政策であり、旧来の日本型取引制度と根本的に違っています。わが国では古くから実績主義が支配的で、取引実績を積んだ取引先だけと取引をするのが一般でした。資材、部品、設備はもとより、鉛筆やネジクギの小物にいたるまで、「いつもの」取引先から調達するのがふつうだったのです。この「継続的取引関係」が下請制度とか、系列取引を形づくっていたわけです。

 オープンな調達システムが理想的だということは、これもでにもよく知られていたことです。しかし、新しい取引先を捜すのは大変な苦労で、テマヒマを考えると、コスト(情報コスト)がかなり高かったのです。そのうえ新しい取引先には信用に不安があり、騙されるリスクがあります。いきおい実績を頼りに、信頼がおける「いつもの」取引先に発注しがちになります。

 新しい取引先と取引を開始することには、「よい売り手が誰なのか分からない」、「不履行のリスクが高く、信頼がおけない」といった問題点があります。この問題点を解決する1つの方策が商社の利用でした。商社には取引相手の情報が蓄積されていますので、また商社はリスクを引き受けますので、商社に頼めば、商社を媒介に新しい取引相手と取引ができます。しかし、商社にマージンを払うだけ、コストは高くなる勘定です。

 インターネットを利用した電子入札システムでは、売り手の公募を通じて、新しい調達先を捜します。しかも、商社を経由しない、直接的な取引です。効率は高くなりますが、リスクへの対処という問題があります。取引は発注してから、納品、検品、決済へと続きますが、どのステップでトラブルがあってもこまる(コスト高になる)のです。品質だけでなく、JITでは納期、納品場所もきわめて重要ですから、これらの取引ステップの管理システムを電子入札システムに組み込む必要があります。それが実際にどうなっているかが、大いなる関心事といえそうです。

◆次回の更新◆

 このラボは隔月更新の方針ですが、更新が遅れ気味で、みなさまにご迷惑をお掛けしています。夏休みには次の更新をいたしたいと考えていますので、よろしくお願いします。


  1999年06月08日

             神戸大学財務会計ラボ

                           岡部 孝好