A Message from Webmaster to New Version(May 30,1998)

1998年05月版へのメッセージ



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◆高温多湿◆

 エルニーニョ現象によるためか、春先から、真夏のよう な暑い日と豪雨の日が交互に訪れ、日本も熱帯みたいになってきたとぼやいていま す。その間、春先のような涼しい日もありましたので、ついに風邪にやられ、何年 ぶりか、病気による休講というぶざまなことになりました。しかし、いまは立ち直 り、六甲台のキャンパスで、大いに新緑を楽しんでいます。

 その六甲台のラボに、いつもご来訪をいただき、ありがとうござい ます。すこし更新が遅れてしまいましたが、この5月版でも、データベースに接続す るなど、わずかですが、新しい工夫をしてみました。この夏には、楽しみなことに Windows98、Windows NT Ver.5も発売されるそうですので、新しい機能も取り込みながら、よりよいホームペ ージにしていきたいと考えています。今後も、よろしくご支援をお願いします。


◆「経営指導念書」◆ 

 銀行が顧客企業の子会社に融資する場合には、恐ろしい 問題が発生する可能性があります。子会社も株式会社ですから有限責任制によってお り、債権者(銀行)に対する株主(親会社)の責任は、株主(親会社)の出資額まで に限定されています。子会社が債権者(銀行)への債務を全部弁済できなくなっても、 それは債権者の損失になるだけで、株主(親会社)が身代わりになって弁済するもの ではないのです。

 他方、親会社は子会社のあらゆる意思決定に関与できま すので、親子間における取引価格などを自由に指定することができます。そこで、 たとえば親から子に販売する場合において、この取引価格(振替価格)を高めに設 定しますと、親の利益が増え、子の利益が少なくなります。さらにこの取引価格 (振替価格)を引き上げますと、親はますます豊かになりますが、子は赤字になっ て、財政状態がわるくなります。取引価格(振替価格)の設定を通じて、親は子の 利益を自分の方に、好きなように吸い上げることができるのです。

 このようにして親会社が子会社を絞り上げるとしますと、 子会社の経営が破綻しますが、これが親会社の政策として行われますと、子会社に 対する債権者(銀行)は大変な被害にあいます。子会社の利益を吸い上げた親会社 は豊かなのに、債権者(銀行)は子会社に対する債権を回収できないのです。有限 責任制のもとでは、子会社に対する債権について、その弁済を親会社に要求するこ とは不可能なのです。

 この危険が存在することを銀行はよく知っていますの で、子会社に融資する場合には、銀行は次のような対抗策を講じています。

  1. 子会社に融資する場合には、 親会社に連帯保証を求める(親会社からすれば債務保証となる)。
  2. 子会社に融資する場合には、 親会社の資産を担保として提供させる。
  3. 子会社に融資する場合には、 親会社に「経営指導念書」を提出させる。

 これらの中で、今回あちこちで話題になっているのは、 「経営指導念書」です。この「経営指導念書」は「子会社の経営については、親 会社が責任をもって指導する」というものですが、これが「債務保証」と類似の 意味をもっており、子会社が支払いきれない債務を、親会社が身代わりになって 弁済するという含みをもつことがはっきりしてきたのです。

 「経営指導念書」が「保証債務」と同等なものであれ ば、それは「簿外債務」となりますし、「簿外債務」であれば、それを公開しない ことには「損失隠し」が行われていることになります。この理由で、「経営指導念 書」は「保証債務類似の債務」として、注記により公開させることになりました。


◆磁気媒体による商業帳簿の保存◆

 取引伝票と会計帳簿が磁気ベースに移行するのにともな い、従来のペーパベースによらなければ(つまり紙に出力しなければ)、商法に定 める商業帳簿の保存義務が果たしえないのかどうかが問題となっていたが、このほ ど法務省民事局から統一的解釈が示され、「合理的期間内に見読可能なものとする ことができる」という条件のもとで、磁気媒体による保存が可能になりました。法 務省の解釈は次の通りです。

 「商法は商業帳簿を10年以上保存すべきことを規定し ているが、書面によって商業帳簿を保存しなければならないという規定はない。 したがって、現行商法下でも、債権者、株主等の閲覧の請求に応じて合理的期間 内に商業帳簿等を見読可能なものとすることができるのであれば、商業帳簿を電 磁的記録によって保存することは可能である。」

 法務省のこの解釈は商業帳簿だけでなく、次のような 場合にも拡大適用されます。

(1)株式会社の株主名簿、端株原簿、社債原簿

(2)株式会社の計算書類および附属明細表

(3)株式会社の清算に関する帳簿および書類


◆磁気媒体による国税用帳簿書類の保存◆

 法人税など、国税については、納税者に帳簿書類 の保存義務が定められていますが、この保存義務についてもコンピュータ化へ の対応がなされ、次の2つを条件に、「電磁的記録」をもってその保存義務を 果たしているとみなされることになりました。

  1. 帳簿書類が最初の段階から一 貫してコンピュータによって処理されていること。
  2. 税務署長の承認を受けている こと。

 なお、この新ルールは「電子計算機を使用して作成 する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(法律第25号、 1998.3.31)という特例法によるものですから、手順としてはかなり本格的なも のです。


◆インターネットとデータベースの連携◆

 最近ではインターネットを通じてデータベースに 新データを登録するとか、インターネットを通じてデータベースを検索すると いうのがごくふつうになってきていますが、この方式を導入しますと、ホーム ページが動的になって、ユーザとの間でインターラクティブな対話を楽しむこ とができます。この「財務会計ラボ」におきましてもかねてより検討をすすめ ておりましたが、このほどいくつかの試作品ができあがりましたので、 「データベース」というコーナーを新設し、さっそ くご披露いたしたいと思います。

 まず第1は、「Eメールアドレスブック」という データベースです。データベースといえば、ふつうは誰かがデータ登録を一手 に引き受け、Eメールアドレスなどをかたっぱしから入力していきますが、こ のシステムでは、この登録手順が完全なセルフサービスになっています。Eメ ールアドレスを公開したいと思われる方が、自分で自分のアドレスを入力し、 自分でデータベースに登録するのです。Do-it-yourself型の新しい考え方に よっているといえます。

 Eメールアドレスを公開する人は、ホームページ 「財務会計ラボ」から、「Data Base」-->「Eメールアドレスブック」-->「 Eメールアドレスあげます」を開き、Eメールアドレスの登録フォームに、自 分の氏名、所属、Eメールアドレスを入力します。この入力が完成したら、 「データ送信」をクリックしますと、入力されたデータはインターネット上を 走り、わたしのパソコン(Bluefoxという名前です)に到着します。このBluefox ではWWWサーバ・ソフト(IIS)のほかに、データベース・サーバ・ソフト(MS SQL) が24時間稼働していますので、送られてきたEメールアドレスのデータは専用の データベースに引き渡され、データベースの該当欄に自動的に登録されます。こ れで登録は完了ですが、この「登録完了」という結果を依頼人にお知らせするた め、Bluefoxでは返信ドキュメント(HTX)を自動的に創生し、インターネットを通 じてデータを登録した人のパソコンに通知します。

 このデータベースの中にある情報を検索するのも、や り方は同じです。「Eメールアドレスブック」――>「Eメールアドレスくださ い」を開き、Eメールアドレスの検索フォームに、検索する氏名、所属、Eメー ルアドレスのどれかを入力し、「Go!」をクリックします。この検索依頼データは インターネットによって Bluefox に送信されてきますので、Bluefoxでは、この 検索依頼データをデータベース・サーバ・ソフト(MS SQL)に引き渡し、データベ ースの中のデータと照合させます。この照合が終了しますと、条件に一致するデ ータがある場合には、データベースの中の情報を、もし条件に一致するデータが ない場合には、「何もない」というメッセージを、インターネットを通じて依頼 人に返送することになります。

 この「Eメールアドレスブック」にどれほど威力が あるのかは、データベースの中にどれほど多くのデータが詰まっているかによ ります。データベースの中のデータがどれほど多いかは、登録フォームによって、 ご自分でEメールアドレスをどれほど多くの人が登録するかによりますので、ぜ ひとも、みなさまにご協力をお願いしたいと思います。

 アドレスが不明では、Eメールは打てないわけです から、Eメールを受け取るためには、知人などに広くアドレスを知らせておく 必要があります。アドレスを隠しておいて、Eメールが来ないと嘆く人がいま すが、それは間違いで、Eメールのアドレスは、電話と同じように、公開する のが原則なのです。名刺、年賀状などにも刷り込み、だれにでもわかるように しておくのが、ネットワーク社会におけるネチケットといえます。

 今回、このホームページに掲載した「Eメールア ドレスブック」は、このEメールアドレスの公開を支援するためのもので、簡 単な検索手順によって、アドレスを取得できる環境を整備しようとしています。 「Eメールアドレスあげます」によって、あなたのアドレスをぜひともご登録 いただきますよう、お願いします。


◆会計文献登録・検索システムの実験◆

 今回試作したデータベースの第2は会計文献検索システ ムです。会計にかんする専門書、論文がつぎつぎに発刊されますが、あまりに数が 多すぎて、「実証会計学」といった限定された研究分野だけにかぎっても、文献 リストを作成するのは容易なことではありません。自分自身の著作リストを作る のさえ、とかく滞りがちになります。

 最近ではワーキングペーパ、学位論文などの形で研究 成果が発表されることが多いのに、商業出版でないために、その情報が伝わって こないことがあります。また、これらのワーキングペーパ、学位論文などがいず れは公刊される場合であっても、公刊までに手間取り、長い間、日の目をみない こともあります。その間、学問は進歩しているわけですから、どこで、どのよう な研究成果がまとまったのか、早く情報を交換する必要があります。

 これらの事情を考慮して、このホームページに Do-it-youself 型の会計文献データベースを作成しました。著書、論文をお書き になったご本人(またはその代理人)に、論文名、掲載雑誌名、号巻、ページなど のご登録をお願いするというものです。

 検索プログラムはあまり強力なものではありませんが、 氏名であれ、単語であれ、任意の文字列を照合し、条件に合致すれば、データベ ースの中の情報を全部書き出すようにしてあります。しばらくテストを重ねてみて、 いずれは強力な検索エンジンに置き換えたいと考えていますので、せいぜいご利用 をお願いします。また使い勝手など、ご意見、ご感想などがおありでしたら、ぜひ ともお知らせください。


◆次回の更新◆

 しばらく梅雨時期特有の湿っぽい日がつづくかと思います が、ご健康にいっそうご留意のうえ、ますますご活躍ください。次回のバーショ ンアップは、7月中旬を予定しています。ごきげんよう。

      1998.03.15

      岡部 孝好@神戸大学経営学部(okabe@kobe-u.ac.jp)