◆岡部ゼミ生たちがWebページに挑戦◆
わが岡部ゼミ4回生がゼミのWebベージの制作に挑戦しています。ワープロ
ソフトで原稿を作成し、HTMLというインターネットの言葉にしたがって、
その中にタグを貼り付けているところです。HTMLの文法は簡単ですから、
ワープロの素養さえあれば、すぐに馴染めます。もうすぐ仕上がりそうですので、近く経営学部のホーム
ページにリンクさせ、世界に向けて公開することになります。ご期待ください。
なお、本年は、3回生のゼミでもインターネットを取り上げ、
Eメールとハイパーテキストをゼミの
「必修科目」にすることにしています。企業内の会計データのやり取りも、また企業外へのディスクロ
ージャーも、すべてインターネット・ベースに転換されていますので、会計関連の実務においても、イ
ンターネットへの対応が不可欠になってきたという認識によるものです。
◆東証が決算短信を電子化◆
東京証券取引所がTDNETを構築し、決算短信など、
適時開示制度をこの
1998年3月から電子化しました。インターネットを通じて、上場企業が公表する「重要事実」をマー
ケットに向けて迅速に、また公平に伝えようするもので、市場の透明性を飛躍的に高めることになります。
この東証のTDNETは情報開示のステップを電子化しただけのも
ので、東証への「届け出」のステップを電子化したものではないようです。したがって、上場企業は、従来と同様
にペーパー・ベースで届出書類を作成し、東証まで足を運んで、担当者に提示し、説明します。東証ではこの
届出書類をイメージファイルとして電子化し、まず報道関係者にコンピュータを通じて公開します。
そして、その後、一般投資者向けに、インターネットで公開するというものです。
イメージファイルでは検索が困難ですから、このシステムの用途は
速報にかぎられることになりそうです。データベースとして情報を蓄積していくには、届出書類
を電子化して、電子ファイリング・システムにさらにアップグレードする必要があります。しかし、そ
れも時間の問題でしょうから、日本でも、ディスクロージャーはインターネット
・ベースに大きく
転換していることになります。
◆Windows用のBASIC◆
かつてパソコンを使うときには、MS-DOBというオペレーティング・
システムのうえに、BASICというプログラム言語(インタプリター)を搭載し、BASICの文法にし
たがって、しこしことプログラムを書くのがふつうでした。1990年代のはじめに Windows 3.1
出回るまでは業務用のソフトもゲームソフトも−−ワープロソフトでさえも−−このBASICよっ
て記述されてきたのです。
この BASICは、COBOL、FORTRAN、PL/1などに比べて文法が単純で、
単語(予約語)が少ないという長所がありました。このため、パソコン・ユーザーの間で圧倒的
な支持を受け、パソコンの標準語といえるまでに普及していたのが実状です。日本においては、
NEC版のN88BASICと富士通版のF-BASICとがあり、激しく競争を繰り広げていましたが、当時
のソフトはこれらのいずれかで書かれていると考えてまちがいありません。
Windows が登場してからは、BASICもグレードアップされ、Visual
BASIC として装いも新たにデビューしました。この Visual BASIC
は Windows向けのソフトを作
るためのアプリケーション開発言語で、新しい機能がたくさん盛り込まれています。したがって、
そのVisual BASIC はきわめて強力ですが、反面において、あまりに複雑で、使いこなすのに骨が
折れるという難点がありました。特に学生に教えるのが大変で、教室ではとても扱い切れるもの
ではないのです。
この問題を解決する方法の1つが、旧来の BASIC を Windows用に改
良して、Windowsのうえで、昔と同様に BASIC のプログラムを作成し、Windowsのうえで、BASIC の
プログラムをランさせるというものです。先日、広告をみていて、
「BASIC for Windows 95(Windows NT)」
(商品名は「F-BASIC 97」で、発売元は富士通)というのがあるのを知りましたので、さっそ
く手に入れ、なつかしい昔の日を思いだしながら、いまテストをつづけているところです。これな
ら初心者でもすぐに使えるので、教育にも取り入れたいと考えています。
◆誤解されやすい連結納税◆
わが国には個別ベースの決算と連結ベースの決算の2つがありますが、
これまでは個別が主、連結が従という形で運用されてきました。それを転換して、連結が主、個別が
従という形に組み替えようとするのが今度の会計制度改革のポイントの1つです。グローバル・スタンダー
ドに移行するために、アメリカ型のシステムに変えるというのが狙いのようです。
わが国の個別決算には税制がリンクしており、個別決算の数値がそのまま納税申告に使われることになっ
ています(確定決算主義)。この制度は変更されない予定ですが、議論としては、税制もアメリカ型
にして、連結ベースの課税システムに転換してはどうかという話があります。これがいわゆる連結納
税制で、興味ある論点の1つといえます。
しかし、これは、個別ベースの決算にリンクしていた税制をやめて、代わりに連結ベースの決算に
納税申告をリ
ンクさせるということではないのです。たしかに、アメリカの税制は連結ベースになっていますが、
税務会計と外部報告会計は別建てになっており、連結ベースの会計数値がそのまま納税申告に使われ
ることはないのです。
連結決算では、どの範囲までを企業集団とみなすかといった点が重要になりますが、アメリカでは
外部報告会計のための連結範囲と納税申告のための連結範囲が食い違っています。そのほか、いろ
いろな点で大幅な食い違いがありますので、2つの会計数値は一致しないことになります。
わが国では、外部報告会計は連結が主、個別が従になりますが、仮に税制を変えて連結納税制を採
用するとしても、アメリカ型にするかぎり、連結ベースの会計数値がそのまま納税申告に使われる
ことはないわけです。連結決算と連結納税制をオーバーラップさせ、2つを直結させるのは、誤解
といってよいでしょう。
◆またもPKO◆
会社が保有する有価証券の評価には低価法が採用されているケースが多いが、
この低価法による場合には、取得原価に比べて決算日の時価が低い時には、時価まで評価減が行われる。
この評価減は損失であるから、評価減を行った金額だけ純利益が低くなり、わるくすると、赤字に転落し
てしまう。赤字になると、株価は下がり、格付けは下がり、金利は上がるなどと、ひどいことばかりが起
きる(会計数値が引き起こす経済的帰結)。
これを避ける方法はいくつかある。まず第1が低価法の適用を止めることである。評価減をしなければ、
純利益は下がらない。銀行では、この考えによって、低価法を棚上げにして、今3月決算期の急場を凌ぐ
つもりらしい。この点は前回に触れた。
第2は、取得原価よりの時価が高い有価証券や不動産を探し、それを市場に売却することである。時価の
方が高い資産を売却すれば、売却益が実現する。評価減による純利益の減少をこの売却益で埋め合わせれ
ば、最終的には純利益は減らずにすむ。この方策は「益だし」といわれている。
この益だしには問題が多いが、その中の1つは、多数の企業が益だしに走ると、株価が下がるという点で
ある。株価は買い手よりも売り手が多いと下落するし、株価が下落すると評価減の金額が膨らむ。この評
価減の金額の膨らみを益だしで穴埋めするとすれば、さらに大量の株式に売りが出て、株価が下がり、評
価減の金額が大きくなる。こうして「アリ地獄」に落ちるおそれがでてくる。
第3は、大量の資金で株式を買い支え、株価の水準を人工的に維持することである。これが、PKO(price
keeping operation)である。株価を人工的に維持すること自体に問題があるが、郵貯など公的資金によっ
て株価が支えられると、それだけ評価減が縮小することはたしかである。
事前に株価が買い支えられると分かっていれば、投資者はそれを前提に投資戦略を選ぶであろうから、この
PKOは投資者が稼ぐ投資収益に影響を与える。公的資金は現在の高い水準で株式を買い、将来の安い水
準で売ることになりそうであるが、これは大損をすることを意味する。これに対して、現在の高い水準で
売っておき(空売り)、将来の安い水準で買い戻すとすれば、これは大きな儲けにつながる。現に外人投
資家などがPKOの買いに立ち向かおうとしているというから、公的資金によって買い支えても、それは外人投資家を儲けさせるだけになるおそれがある。現在のマーケットはボーダレスになっているから、国内だけの
対応をしても、それでは問題は片づかないようである。
◆次回の更新◆
絶好の季節です。お仕事のご進展を祈ります。次回のバーションアップは、
5月上旬を予定しています。
1998.03.15
岡部 孝好@神戸大学経営学部(okabe@kobe-u.ac.jp)
