
A Message from Webmaster
to New Version(October 1, 2006)
2006年10月版へのメッセージ
OBE Accounting Research Lab
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[1995年10月 ラボ開設のご挨拶][
Webmasterからのメッセージのバックナンバー]

◆Salinas Valley◆
シリコンバレーとして知られるサンノゼ(San Jose, CA, USA)への出張の折、かねてより夢に描いていた古い農村
Salinas Valleyを訪れることになりました。San JoseでAMTRACKバスをとらえ、国道101線を南へ80kmほど下って、
ようやく辿り着いたのがSalinasの旧駅舎。この駅舎は、鉄道が廃線になっているいまではバスの乗り継ぎにしか使
われていないらしく、人影もまばらで、閑散としていました。最高気温が107度Fにも達した2006年7月25日のことで
す。
Salinas Valleyは1962年のノーベル賞作家のJohn Steinbeck(1902.2.27−1968.12.20)のホームタウンで、彼の作品の
中ではその豊かな情景が熱っぽく語られています。『赤い子馬』とか『エデンの東』には、一家が営んでいた貧しい農
場とそれをとりまく牧場、草原、湿地、森林が細かく描かれていますし、『ハツカネズミと人間』などでは、サリーナ
ス川の清流とか河畔の柳が物語の舞台になっています。街の中央のMain st.にはSteinbeck Centerが建設されていて、
資料が展示されていました(写真上)。代表作の『怒りの葡萄』をはじめ、彼の作品と関連資料が多数ありました。

Salinas Valleyはカルフォーニア州の南西部に南北に広がる盆地で、テーブル上に細長いお皿をタテに置いて、その周
囲をロールパンで囲ったような地形です。西側にはサンタ・ルシーアスという大連峰が、東側にはギャビランという山
脈が横たわっており、ほぼ中央をサリーナス川が北に向かって流れています。Salinasは「渓谷」というよりは「大草原」
という感じで、広大な農地や牧場がうねうねとつづいています。(右の写真はサリーナスのMain Street。
スタインベックの家族が年1度、2頭だての馬車で食事に訪れたホテルが残っている。2006.07撮影)
Salinasはいまは「世界のサラダボウル」と呼ばれていて、野菜栽培の拠点になっていると知りました。レタス、ブロッ
コリー、タマネギなどの大規模な生産が行われていて、いたるところでトラクターや巨大トラックが土埃を巻き上げてい
ます。このためもあって、サリーナス川の清流にも、またその河畔の柳にも、ついに到達できませんでした。アメリカは
やはり広大で、変化の激しい国です。
Salinasの人口は15万人といいますから、わたしの住む池田市(10万人)より少し大きいだけです。驚いたのはその人口
構成で、67%がヒスパニック系ということで、残りの半分が白人系なのだそうです。街のレストランはどこもここもタコ
スばかりで、これにはほんとうにこまってしまいました。わたしのいちばん嫌いなのが豆料理で、タコスの黒豆がでてく
ると、家畜の飼料を連想して、吐き出しそうになってしまうのです。

やや寂しく思ったのは、街のひとびとがJohn Steinbeckという人の名前を知らないということです。おそらく現地のひと
でも、John Steinbeckの小説を読んでいるひとはごく少数なのではないでしょうか。日本人でSteinbeck Cneterを訪れ
るのはめずらしいと聞きましたから、最近ではSteinbeckを研究しているアメリカ文学専攻の学生は減ってしまったのかもしれ
ません。(写真はカリフォールニア大学バーケレイ校のビジネス・スクール付近で見つけた花。名称は不詳。2006.07撮影)
◆好評発売中!『最新 会計学のコア(改訂版)』◆
2003年に出版されたわたしの著書『最新 会計学のコア』(森山書店)は、新しい会計基準の制定、
新しい会社法と会社会計規則の施行などによって、最新ではなくなってしまいました。そこで、新
時代の日本の会計ルールに合わせて内容を大幅に組み換え、改訂版として再出発することになりま
した。8月より書店の店頭に並んでいる『最新 会計学のコア[改訂版]』(森山書店)がその新装改
訂版です。
新会社法はわかりずらい法律で、条文を読んだだけで、内容を理解するのは大変です。しかし、
『最新 会計学のコア[改訂版]』では、「剰余金」、「配当可能額」などをのキーワードを含め、
基本的な専門用語をやさしく解説しています。会計学の初心者のことをいつも念頭において書いて
いますので、会計学のド素人でも、すらすらと読めるはずです。

◆ポンドとオンス[度量衡のはなし]◆
アメリカの生活でややこしいのが、度量衡。ビフテキの大きさは重さで
表現されますが、アメリカではその単位はグラムではなくポンドとオンス。メニューをみると、Beef-stake 12oz、8ozなど
と書いてありますが、ozはオンスの略号で、1ozは1ポンド(1pd)の16分の1。1pdは454(正確には453.59)グラムに
あたりますから、
12ozは340グラム、8ozは227グラムという計算になります。歳が寄ってくると、8oz、227グラムのビフテキは何とかこなせ
るとしても、12oz、340グラムとなると、もてあましてしまいます。4ozでも113グラムになりますから、日本人なら、これ
で十分アメリカ牛を「食った」という感じがするはずです。メニューの隅をよく読んで、オンスをたしかめてから
注文を出さないと、大変なことになります。7年ほど前にアメリカの友人の家族と有名なTボーン・ステーキのレストラン
に行き、巨大なステーキと闘ったところ、その夜に歯茎が腫れ上がり、治療のために帰国を繰り上げなければならないこ
とになったことがあります。

ポンドとオンスの関係は16進になっているのに、アメリカでは、長さはフィート(feet, ft.)とインチ(inch, in.)になっ
ていて、これは12進で繰り上がります。1in.は2.54cmですが、1ft.は10倍の25cmではなく、12倍の30cm(正確には30.48cm)
になります。なお、インチは指の長さを、フィートは足の大きさ(タテの長さ)を標準にした単位で、大昔から使われて
きたものです。アメリカでは、いまでも身長の表現はフィートによっており、アメリカ人でも5ft.(=152.4cm)以下なら小
柄といえますし、6ft.(=182.88cm)以上なら大柄になるのではないでしょうか。
ガソリンスタンドに行くと、ガス(石油)はガロン単位で販売されています。1ガロン(1 gallon)は3.8リットル(正確に
は3.7835リットル)ですから、あまり換算はむつかしいとは思えません。というのも、アメ車のガソリン消費量は日本車の
約3.8倍くらいになり、ガロンとリットルの区別がつきにくくなるからです。しかし、ワインにしろ、ウイスキーにしろ、
酒類はガロン単位では販売されていないので、これもややこしくなります。液量の単位はパイント(pint, pt.)、クォート
(quart, qt.)によっていて、何と2進法により、2パイントが1クォートに、さらに4クォートが(8クォートが)1ガロンに
繰り上がります。1パイントは0.5リット
ル弱(1pt.=0.4732)、1クォートは1リットル弱(1qt.=0.9465)の容量であり、1パイント以下は半パイント、2/3パイントな
どと分数で表現されます。このため、アメリカでは、リカー・ショップでの買い物は簡単なことではなくなります。実際
には、カンとかビンの単位で買い物をするわけですけれども。

◆トラッキング・ストック◆
トラッキング・ストック(tracking stock)というのは、配当の支払条件に特別な条項を設けた
優先株式の1種を指します。いま会社Xにx1、x2、x3という3の事業部があって、x1は好業績な
のに、x2とx3は業績が思わしくないとします。この場合、会社Xの全体の業績が優れないとすれば、株
主への現金配当は少なくなってしまいます。そこで、会社全体のXの純利益を基準にする代わりに、
事業部のx1の業績を基準にして、現金配当を行うわけです。これが、トラッキング・ストックと
いう株式で、かつてソニーがこの株式を発行し、話題となったことがあります。

2006年5月に施行された新会社法では、配当に対する規制が大幅に緩和され、会社ではいつでも、
好きなだけ、配当してよいということになりました。そのうえ優先株式(会社法上の名称は「種
類株式」)が多様化され、どのようなタイプの優先株式でも、会社が勝手に創ってよいというル
ールに変わりました。このため、トラッキング・ストックが、またも注目されはじめています。配
当の基準を変則的にした各種の優先株式が多数出回ることになりそうなのです。
株主の権利が平等ですと、1株の株式の中身が均一になりますので、1株の株式の価値を見定め
るのが容易になります。これに対して、株主の権利を不平等にすると、1株の株式の中身がバラ
バラになって、株式の価値を評価するのがむつかしくなってしまいます。優先株式というのは、
株主の権利に優劣をつけ、株主の権利を不平等にするものですから、優先株式の価値を評価する
のは、その筋の専門家でも、簡単なことではないのです。それなのに、トラッキング・ストック
のようなややこしい優先株式が、これからますます増えてきそうな情勢です。
◆シャチョウ◆
日本では会社のトップは「社長」といわれ、社内では一番が権限が強く、また責任も一番重いと考え
られています。シャチョウというのは、日本では一番尊敬される職位らしく、バーなどでも、シャチョ
ウ、シャチョウということばが飛び交っています。
しかし、不思議なことに、日本の会社法には「社長」という用語が見当たらず、その職務
が定義されていません。「会長」、「常務」、「専務」なども同様で、会社法ではまったく触れ
られていませんから、単なる慣用語なのでしょう。銀行では社長とはいわず、頭取、総裁(たとえば
日本銀行)ということもありますが、これらも慣用によるもので、それぞれの銀行で勝手に決めてい
ることのようです。

最近ではアメリカの例によって、社長のことをCEO(Chief Executive Officer)と呼ぶ会社も多く、
名刺を拝見するとその和訳である「最高経営責任者」と印刷されていることもあります。しかし、こ
のCEOも会社法では定義されていませんので、会社内部の肩書きが表に出ているだけのことといえ
そうです。(左はハナミョウガの花)
会社法において正式な会社役員として挙げられているトップ・マネジメントは、会社の種類によって
その名称が違っています。小規模な閉鎖会社では取締役がそのままトップ・マネジメントとされていますが、
取締役会設置会社では代表取締役と業務執行取締役が、また委員会設置会社では執行役と代表執行役が
、会社の「顔」として、会社を代表できます。問題は、これらの代表権をもつトップ・マネジメントが
もうひとつ別の通称名を使うことで、その通称名もまちまちです。社長であったり、会長であったり、
CEOであったりするのです。なかには、「上級執行役員」という紛らわしい名刺をもってくるひとも
います。
会社の使用人を「課長」と呼ぶのか、「チーフ」と呼ぶのか、「グループ・リーダー」と呼ぶのかなど
は会社が勝手に決めてよいことです。同様にして、会社の支配人を「本部長」と呼ぶのか、「店長」と
呼ぶのかなども、会社において決めることです。しかし、会社の代表権をもつトップ・マネジメントの名称がまち
まちでは、世の中がややこしくなります。特に紛らわしい名称は、こまります。
会社法は、代表権のない取締役に社長、副社長などの名称を使わせ、善意の第三者をだました場合には、
だました会社が責任を負うとして、この「表見代表」の余地に釘を刺しています。しかし、ビジネスの
世界にはウソをつくひとが多く、油断すると口車に乗せられる危険がいつもあるわけですから、せめて
トップ・マネジメントの名称なりとも、制度のうえで、はっきりさせてほしいものです。

◆メコン・デルタへの旅◆
メコン河は中国の雲南省(たぶんはもっと奥のヒマラヤ山脈)に発して、ラオスを縦断し、
カンボジアとベトナムを横切って、南シナ海に注いでいます。全長3,000Kmを超えるともいいま
すから、世界でも屈指の大河で、中国の奥地で降った雨水が海洋に達するには2年半もかかると
いわれています。
ラオスのビエンチャンには何度か滞在しましたが、そのときのメコン河は、潤いの水辺でした。
メコン河沿いのヤシの木陰には屋台が並んでおり、散歩の帰りに、巨大な赤い夕日を眺めながら、
川魚料理と地ビール(ラオビヤ)を楽しむのは最高の夕べでした。ちょうど乾季のころのことで、
水流は川底を這っている感じでしたが、それでも水勢は激しく、さすがは大河メコンの流れという
壮大さがありました。

この2006年の夏に、ベトナムのホーチミン市(旧名サイゴン)を訪れる機会(2006.09.11-09.14)
に恵まれましたので、半日の旅程を工面して、メコン河へ向かう観光バスに乗り込むことにしました。強
烈な熱気と溢れる湿気の中での悪路の旅でしたから、ホーチミン市から南への2時間のドライブはか
なりこたえましたが、メコンの河口都市「ミト」に着いてみると、広大なメコン河が拡がっていて、
またもや感激です。茶褐色の濁流が渦巻いている点を別にすると、メコンは河というより、もう海の
風情です。いまは雨季の最中ですから、とうとうとした流れをたたえており、水面も、海の干満の
影響を受けて、1日の3-4Mも水面が上下するといいます。(右はドラゴンフルーツ。この
果物がサボテンになるものとは知りませんでした。 2006.09撮影)
河口付近のメコンは9本の支流の分かれており、支流と支流の間にヤシの覆い茂る島々が点在して
います。メコン・デルタです。小さなボートでその島の1つに渡ってみると、島の奥は熱帯果樹林で、
モンキーバナナ、ココナッツ、パパイヤ、リューガン、ドラゴンフルーツなどの実がたわわに稔って
います。これらの熱帯のフルーツは、その栽培が観光資源になっているばかりでなく、ベトナムにと
っての重要な輸出商品だといいます。清潔とはいいがたい小規模な缶詰工場も、いくつか目にしまし
た。
ベトナムの東海岸では漁業が盛んで、ベトナム料理では多彩な魚料理が楽しめます。胡椒の量を控
え目にすればのことですが、鯛の仲間の魚をまるごと水炊きにした鍋料理がまた格別で、これは米粉
の生そばと野菜にぶっかけていただきます。ベトナムでは、淡水魚の養殖も盛んに行われているらし
く、ハイウェー横の田圃でも、小さな生簀に囲われた養殖場を何度も目にしました。

(メコンのブーゲンビリア 2006.09撮影)
ホーチミン市への帰途には猛烈な豪雨に見舞われ、道路が冠水し、水田も、道路も水浸しになって、
側溝や河との見分けがつかないほどでした。どうにか無事にホテルに辿り着き、さっそく魚料理を注
文してビールを飲みはじめたのですが、そのときに心配になったのは、水面の下に沈んでしまった養
魚場のことです。あの洪水のあと、生簀の中の魚はいったいどうなったのでしょうか。
◆次回の更新◆
これから絶好の秋を迎えます。
ご健康にご留意のうえ、素晴らしい秋の日々をお楽しみください。次回の更新は暮れのことになるでしょう。
ごきげんよう、さようなら。
2006.10.01
OBENET
代表 岡部 孝好
okabe@obenet.jp

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