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◆梅雨◆
◆合宿◆ ◆新ネットワーク「kobebs.ne.jp」が稼働を開始◆
http://www.kobebs.ne.jp/
◆学内では無線LANとVODがテスト運転を開始◆ ◆社会人MBAコース向け「財務会計応用研究」がいよいよ開講◆ ◆新興企業向け証券市場の開設◆ ◆減損会計の中心問題◆ ◆次回の更新◆ 2000年6月18日
岡部 孝好@神戸大学経営学研究科
夏草の生い茂る梅雨のころとなしましたが、みなさまいかがおすごしでしょうか。六甲台キャンパスには、ティシャツ、ショートパンツに、サンダル履きの学生たちが行き交っています。チャパツにケイタイという姿はめざわりにならなくなりましたが、いつのまにか学生たちは爽やかな夏衣装に変身しています。
最近、この「財務会計ラボ」に対するアクセスが激増し、大いに感激しています。授業を受けている学生が利用してもカウンターは増えない仕組みですが、それでも、月2,000件あまりのアクセスがあり、ログファイルが膨れ上がっています。たいへんありがたいことですのに、またも更新が遅れて、もうしわけありません。
6月の後半ともなりますと、残りの講義日数が気になり、教室に行くたびに焦りみたいなものを感じてしまいます。前半に遊びすぎて、当初の計画どおりには、講義がすすんでいないのです。しかし、これは夏休みが近づいているということでもありますので、もうひとまわり声を張り上げ、元気に梅雨明けを迎えたいと思います。
この4月には16名の3回生を岡部ゼミに受け入れましたが、6月2日・3日に、その新ゼミ生たちと1泊2日のテニス合宿を張りました。場所は神戸市北区の「しあわせのむら」です。天気にも恵まれしたし、へたくそなプレイに汗を流した後には、神戸ビール、神戸ワインも十分に味わいました。申し分のないコート、立派な宿舎、それにジャングル温泉を楽しむことができたのは、本当にしあわせなことで、蓄積していた疲労も抜け落ちたような気がします。
当初は、今春卒業した社会人院生、学部ゼミ生をも加え、盛大なテニス大会を開催するということをもくろんでいましたが、何分にも土日にコートを確保するのがむつかしいため、今回は3回生だけの合宿に切り替えました。次回には、卒業した社会人院生、学部ゼミ生も参加できるように、もうすこし早めにプランを立て、土日にテニス合宿を企画したいと考えていますので、ご関係の筋は、ひごろからワザを磨いておくというこころがけをわすれないでほしいものです。
自宅から簡単にアクセスできるオフキャンパス・ネットワークを創設するため、昨年末よりずいぶん走り回ってきましたが、このほどこの新システムがようやく立ち上がり、好評のうちに運営を開始しています。学外に神戸ビジネススクールのドメインを確保し、専門のプロバイダーにその運営を委託するという新しいモデルです。そのホームページは次のアドレスにありますので、ご希望の方は、ブラウザーによってこのサイトにアクセスすれば、入会手続きをすることができます(ガイドもあります)。
神戸ビジネススクール専用のインターネット拠点ですので、サービスの対象は経営学部の関係者に限られます。しかし、現役だけでなく、卒業生にも広く解放されていますし、スタッフ、院生、学部生もみなおなじ扱いです。使いほうだいで月¥1,000(卒業生は月¥1,600)という低料金ですので、けっして損はないはずです。MLサービスも付いていますので、ゼミ、サークルなどのグループでも利用できます。
無線LANが爆発的に普及する傾向をみせていますが、経営学部では本館306教室に無線LANの親機を取り付け、周辺450メートルに向けて、電波を発信しています。学生、院生はノートパソコンを六甲台キャンパスに持ち込み、電子メールの受発信とかブラウジングを行うことができるようになりました。無線LANの電波を受信するには、ノートパソコンに専用アダプターを装着する必要がありますが、このアダプターは、希望する学生に貸与することになっています。
他方、ビデオ・オン・デマンド(VOD)というのは、講義とかシンポジュウムなどの動画コンテンツを、インターネットを通じて、遠隔地のユーザーに配信するシステムです。ブラウザーのソフトに動画用(MPEG)のプラグイン・ソフトを組み込めば、インターネットによって動画コンテンツ(音声付き)を見ることができます。社会人院生の中には、出張などのために講義にでられないことがありますが、このVODによれば、その穴埋めができます。
動画コンテンツは巨大ですので、通信回線が細い場合には、ファイルの受け渡しに問題がでることはたしかです。しかし、ブラウザからいきなり動画を再生する方法のほかに、いったん動画ファイルをディスクに落とし、ディスクの動画ファイルを再生する方法も利用できますので、たとえばダイヤルアップによる場合でも、このVODを使うことができます。自宅とか出先から、インターネットを通じて授業を受けたり、シンポジュウムとかワークショップに参加できるというのは、IT革命がもたらした素晴らしい恩恵ではないでしょうか。
神戸大学経営学研究科における社会人MBAコースでは、毎年、約70名の社会人大学院生を受け入れ、夜間、土日曜日を中心にビジネス教育プログラムを提供しています。本年入学の1年次生にはこの春よりいくつかの「応用研究」を開講していますが、その1つが「財務会計応用研究」(担当:岡部)です。この「財務会計応用研究」の開講日は、6/25、7/1、7/8、7/22の4回と決められており、それぞれ朝9時から5時まで、集中講義が行われます。
これら4回の終日講義においては、午前中に2コマの、午後に2コマの時間割りが組まれていますから、教官にとっても学生にとっても、たいへんなハードスケジュールであることはまちがいありません。しかし、それはまた短期間に中身の濃い時間をエンジョイできるということでもありますので、何とか頑張り抜きたいと思います。教材の提供はインターネット・ベースによることにし、すでに連休明けよりコンテンツの準備をはじめています。
4日間の講義のうち、最初は契約コスト理論にもとづく理論的なフレームワークを検討します。しかし、その後は身近な話題に転じ、エクイティキャピタルのマネジメントとか、新興企業のエクイティ市場など、ベンチャーにかかわるカレントなトピックを取り上げる予定です。もうひとつの大きな柱はネットワークですが、ここでもeコマースなど、最新のネットワーク・ビジネスを検討したいと考えています。これらのトピックに関連する資料は、おいおい「財務会計ラボ」からも発信されることになります。
東証のマザーズにつづいて、大証のナスダック・ジャパンが6月より取引を開始しました。当初の上場会社は8社ということですが、この新市場の成り行きが関心を集めています。アメリカのナスダックの日本版とはいえ、日本の市場環境において、果たしてうまくいくのかどうか、論点は多数ありそうです。
ほんの数年前までは日本の証券市場は政府によって厳重に管理され、「危ない証券」は市場から締め出されるのがつねでした。規制や上場審査基準が厳しく、品質の怪しい証券は上場を認められなかったのです。それがいまでは様変わりになり、投資者の自己責任という原則のもとに、品質が定かでない新興会社の持分証券がつぎつぎに市場に登場してきています。先日、東証のマザーズに上場を果たしたさる航空会社は、なんと債務超過会社でした。
アマゾン・ドット・コムをはじめ、アメリカのドット・コム会社は、そのほとんどがまだいちども黒字を計上していないといわれています。それなのに株価は飛んでいて、巨大なキャピタル・ゲイン(と新しいリッチマン)を生んでいます。この現象は、会計利益と株価を関係づけようとしてきたファンダメンタル分析の視点からは説明不能というほかはありません。キャッシュフロー経営とかEVA経営の考え方からしても、まったく異質なものなのです。新しい理論モデルを模索する必要がありそうですが、その議論がどこからも沸いてこないのが、不思議といえば、不思議です。
設備など固定資産がその価値を大きく損傷している場合には、その価値損傷分を会計的に早く認識して、「含み損」を表に出すのが健全だといえます。減損会計では、この考えから、どのようなタイミングで、どのように価値損傷を認識するが関心の焦点になります。
一般には時価(アメリカの基準では「公正価値」)と比較して、簿価よりも時価が低いときにはその差額を減損として認識すべきだ、といわれます。しかし、これは金融資産の考えをそのまま固定資産にあてはめたもので、正しい見方とはいえないのです。固定資産にはそれ特有の特性があって、それほど問題は簡単ではないのです。
いま変動費+αのキャッシュフローを稼いでいる工場があるとします。αが固定費にほぼ等しいとすれば、この工場は変動費だけでなく、固定費のほどんどをカバーしていますので、操業をつづけることにさして問題はないといえます。しかし、αが固定費の全額をカバーしきれていないとすれば、損益計算書は赤字です。
この状況において、経営者が事業を継続すると決定すれば、この工場はさして価値損傷を引き起こしていないといえます。工場はキャッシュフローを生みだしていて、ほぼ簿価に相当する価値があるのです。しかし、たとえば損益計算書の赤字を消すという理由で(というよりも5%ほどのROEを確保するという理由で)、この工場を閉鎖する(リストラを断行する)と決定すると、工場の価値はゼロ(というよりもスクラップを処分するためにマイナス)に下がります。閉鎖すればキャッシュフローは生まれませんから、工場はその価値を損傷してしまいます。この場合において、減損会計が必要になります。
ここで重要な点は、工場が減損するかどうかが「経営者のハラひとつ」で決まるということです。苦しくとも、経営者が操業をつづけるかぎりは工場に減損はないといえますが、弱気になって、閉鎖(あるいは縮小)を決断すると、巨大な減損が発生するのです。しかも、減損が発生するタイミングは「決断のとき」ということになりますので、「いつ決めたのか」によって減損の認識時点が違ってきます。
減損が発生したら速やかに会計的に認識して、外部に公開するのが減損会計の課題です。しかし、減損が発生するかどうかが経営者の意思決定に依存していますし、そのタイミングも意思決定の時点に左右されるのです。経営者の意思決定を縛るルールそのものがない状況において、減損の認識を特定する会計ルールを決めるのはきわめて困難なのです。
梅雨が明けると、いよいよ夏です。海も山も輝いているはずですので、ことしこそクーラーのお世話ばかりにならないように工夫して、健康的な夏休みにしたいものです。会計学もパソコンもけっして楽しくないわけではありませんが、ときには仕事をはなれ、自然の風の中で、時間を空費する贅沢を味わいたい気がします。みなさまも、ますますお元気にて、よい夏をお楽しみください。
次の目標は9月です。ともすれば更新が遅れ気味ですが、9月にはみなさまにお目にかかれるように、頑張りたいと思います。