A Message from Webmaster

 to New Version(October 10, 2005)




2005年10月版へのメッセージ


OBE Accounting Research Lab



Back Numbers [1995年10月 ラボ開設のご挨拶][ Webmasterからのメッセージのバックナンバー]


◆タイガース優勝!◆

 すがすがしい初秋になりましたが、みなさんいかがおすごしでしょうか。 阪神タイガースがVロードを驀進し、みごとに、風船の舞う甲子園で優勝の 二文字を勝ち取りました。最高の秋です。

 ことしもまた切符の入手難で、ほんの6-7回しか、球場には行けませんでした。 しかし、球場に行くたびに勝って、嬉しい想いをさせていただきました。 世は不況でも、球場はいつも興奮の渦で、熱気と活気に満ち溢れています。タイガース が勝つと、ビールも食事もおいしくなって、体調までがよくなってき ます。そういえば、最近では、体重が戻ってきた感じです。

◆シリコンバレーへの旅◆

 2005年8/4から8/10まで、シリコンバレーへ調査旅行にでかけてきました。 サンフランシスコ国際空港から地下鉄BARTに1駅だけ乗って、南のMillbraeへ。 MillbraeでCaltrainに乗り換え、Santa ClaraをへてSan Joneに向かう。 Caltrain(写真)というのは昔のAmtrackのレールを走る本格的な長距離列車ですが、 いまはサンフランシスコへの通勤・通学列車になっているらし い。どの駅にも広い駐車場があって、車が列をなしています。こ Caltrainの2階建ての列車に乗ると、これで遠くに旅した昔を思い出して、 こころが浮き立ってきます。

 San Joseはシリコンバレーという別名をもっていて、世界に名だたるIT 企業の集積地。小さな街ながら、景観、安全にも配慮が行き届いていて、 街路は清潔。ひとむかしでは考えられない斬新なアメリカの風景でした。 (下の写真はサンノゼの一番街で、広い道路の両側にIT 企業が並んでいる:2005年8月撮影)

 一番街を貫く路面電車(トロリー・レール・バス)は、けっこう速くて、 便利な乗り物。どこへ行くにも、この電車で用が足りる。車社会のアメ リカのことだから、その乗客には子供とシニア・パースンが多かったこ とはたしかであるが、安くて快適。

 サンフランシスコで開催されたアメリカ会計学会の年次大会に参加する ことも、この旅の大きな目的になっていました。しかし、サンフランシスコ は悪天候で、気温が上がらず、ふるえました。2-3の会場には顔をだしたものの、 「寒い、寒い」とホテルでぐずぐずしている間に、日程が終わってしま いました。

 1昨年にはハワイへ出かけたが、アメリカ本土への旅は、2001年のアトラ ンタ以来、4年目のことになります。アメリカに来て思うのは、やはりアメリカ は豊かで、スマートだということです。着てるものは地味でも、家 も車も一級で、自分の生き方に自信をもっています。はっきりモノをいって、 ばりばり働いている。アメリカはいつも活力に満ちていて、気分に湿り気 がない。

◆「大げさな表現」のこと◆

 社会人院生の修士論文などを読んでいると、「非常に」、「すごい」、「大変」といった表現に頻繁に 出会うことがあります。「非常に大変」とか「大変すごい」といったことばも、見た覚えがあります。 しかし、こうしたことばによる強調はべつに文法違反ではないから、「やめろ」というわけにもゆかず、 多少のイヤミをいう程度にとどめていました。しかし、この夏休みに本を読んでいて、大げさな表現の 使用を控えるのは、やはり賢明なことなのだということを知りました。

 たとえばEarnest Hemingway(1999-1961;1954年のノーベル賞受賞者)は、若い修業時代に、大げさ形容 詞を使わないように徹底的に仕込まれていて、生涯にわたってsplendid, gorgeous、grand、magnificient といったことばを使わなかったといわれています。小説では語勢(ことばの勢い)、語調(ことばの調子) を強めるのは不可欠なことですが、他の表現の仕方を工夫して、あの「まことに大変すばらしい」(!!) 小説を書き上げたわけです。文章を書く心得も、もう一度、勉強してみたいと思います。

◆帳簿締切期日の操作による架空売上高の計上◆

 日本でも架空収益計上が新聞を賑わしていますが、最近、アメリカにおいて流行している手口は、 "cut-off"だという。会計期末において帳簿の締切りを故意に遅らせて、翌期の売上高を当期の売上高 に取り込むやり方です。会計期末になっても、取引書類に押すスタンプの日付けを変えないままにして おくと、いつまでも会計期間が終わらずに、売上高が増えつづけます。最近では会計帳簿はコンピュー タによって作成されていますから、コンピュータの日時設定を過去に戻している例が多いという。

 販売した商品が返品されてくると、その分だけ売上高を減額しなければならない。この返品の処理では、 スタンプの日付を将来期日に設定して、当期の返品を翌期の返品にみせかける例も多いという。まこと にセコイ話ですが、売上高を1ドルでも高くしたい気持ちは、わからないわけではない。

◆ストックオプション付き商品販売◆

   ストックオプション(新株予約権)はすでにかなり濫用されていて、その急増に顔をしかめる人は少な くない。転換社債、ワラントなど、社債の発行にストックオプションが組み合わされているだけであれ ば、まだかわいい話であるが、最近では役員報酬、従業員給与の代用としてストックオプションが使われ る例が多い。人件費の節約のために株式の安値発行が行われると、資本取引と損益取引がごちゃごちゃ になって、会計数値はわけのわからないものになってしまう(曼珠沙華はわが家に、数年ぶりに自生したもの:2005年9月撮影)

   アメリカで報告されている事例によると、最近では、商品の販売取引にストックオプションを組み合わ せるケースがあるという。顧客が最低限の財・サービスを購入すると、顧客の側に新株 の安値買受権が発生するというのです。顧客がこの権利を行使すると、新株に対する払込みが行われます が、その払込価額は時価に比べて割安ですから、ストックオプションは商品の販売対価という意味 をもってきます。しかし、新株の発行価額が割り引かれているとしても、売上高は減額されないわけですから、売 上高の金額は嵩上げされたままです。

   ストックオプションが人件費とか売上高の会計数値を歪めることは明らかですが、これを補正する会 計の手だてはまだみつかっていません。日本でもアメリカでもいろいろな議論がなされていますが、ストッ クオプションの会計ルールはまだ確立されていないのです。その間に、おびただしいストックオプションが出 回っていますから、やられ放しということになります。

  

(うえのボケた写真は萩の寺「 東光院」(阪急曽根駅近く)のもの:2005年10月撮影)

◆変動転換条項付き転換社債◆

   転換社債というのは、会社が売り出す社債(小口に分割された借用証書)の一種 であり、会社にとっては、社債券の引渡しの見返りに資金を借り受けますので、発行時 においてはまぎれもない負債です。利払いの義務のほかに、満期日には社債を 償還して(買い戻して)、負債を返済しなければなりません。この点で、転換社債は金利も返済額 も確定した確定利付き負債です。

   しかし、転換社債には、「転換権」という特別の権利が付加されていますから、社 債を保有する投資者(社債権者)は、社債を投げ出すのであれば、その代償とし てその会社の株式を買い取ることが可能です。社債から株式へと乗り換えるオ プションが付いているのが転換社債であり、この社債から株式への切り換えは 転換社債保有者だけに許された特権です(発行会社 に転換請求権があるわけではないから、発行会社の「命令」によって、社債から 株式へと証券が差し替えられるのではありません)。なお、転換請求権は 1回かぎりの片道切符で、社債から株式へ転換した後に、株式から社債に復帰させる ことはできないことになっています。

   転換社債には、何円相当の社債に対して1株の株式を売り渡すという比率が 定められており、この比率が転換価格といわれているものです。この転換価格は 最初の発行時に決 定され、その後変更されないというのが、従来からのルールでした。しかし、毎月 の株価の平均を参照して、転換価格をたえず変更する新しいケースがでてきています。「変動転換 条項付き転換社債」(Moving Strike Convertible Bond)というのがそれで、この 場合には、転換価格が株価に連動して、柔らかく動くことになります。

   転換価格が固定されていると、それがあまりに高すぎて、権利行使のチャンスが訪れ ない場合がでてしまいます。変動転換条項付きであれば、この権利行使のチャンスは 増えることになります。しかし、いつも株価に連動しているとすると、転換権を行使して も大きなサヤは取れないはずですので、投資の妙味は減ることになるかもしれません。

◆純資産、株主資本の再定義◆

   連結財務諸表における「株主資本」が名称変更になって、「純資産」 と呼ばれることになるらしい。資産から負債を控除した残りを純資産というの は古来からの仕来りであるから、昔に戻ったともいえます。資本、自己資本、 株主持分、純財産といった多様な名称がいまでも通用していますが、これからは 正式には「純資産」がトップにきて、「株主資本」はその子分ということになります。

   新しい定義によると、純資産の部は、次のようになります。

  純資産の部

   T 株主資本

      1 資本金

      2 資本剰余金

      3 利益剰余金

      4 自己株式

        (株主資本合計)

   U 評価・換算差額等

      1 その他有価証券評価差額金

      2 繰延ヘッジ損益

      3 土地再評価差額金

      4 為替換算調整勘定

        (評価・換算差額等合計)

   V 新株予約権

   W 少数株主持分

        (純資産合計)

   繰延ヘッジ損益は、以前には負債の部に表示されていましたから、新たに 純資産の部に移転したことになります。少数株主持分も以前には負債とされ ていたわけですから、これも純資産への移動です。これら2つについては旧来はい ろいろな考え方がありましたので、解釈が統一され、すっきりしたことになります。2006年1月に 新基準が公表される、と報道されています。

(上のもみじは、神戸大学六甲台キャンパス の本館前庭の林の中にあるもの、
下は三木記念館前:2003年ごろ撮影)

◆次回の更新◆

 この秋には時間をみつけて、小 旅行に出てみたいと思っています。景色もさることながら、食べ物や温泉が楽しみ です。これからが本格的な秋です。みなさんもお元気で、よい秋の日々をおすごし ください。次回の更新は、暮れを予定しています。さようなら。


2005.10.10

OBENET

代表 岡部 孝好

okabe@obenet.jp