A Message from Webmaster

 to New Version(July 25, 2005)




2005年07月版へのメッセージ


OBE Accounting Research Lab



Back Numbers [1995年10月 ラボ開設のご挨拶][ Webmasterからのメッセージのバックナンバー]


◆天神祭◆

 大阪の夏の盛りは天神祭。一年で一番暑いのが、天神祭のころです。その夏の盛りになりましたが、みなさん、 ご機嫌いかがでしょうか。暑中お見舞い申し上げます。(左の写真は天神祭りの宵宮で、天満宮の 大門から御輿が繰り出すところ:2005年7月24日撮影)

 今年は雨の少ない梅雨でしたので、いちじは干魃が心配されていました。しかし、大阪では恵みの雨がなんどか降り、 渇水のおそれはなくなったもようです。琵琶湖の水位も、もどっていると聞きました。

 ことしの春には、神戸大学経営学部から阪南大学経営情報学部へ の転勤があり、引っ越しなどで、てんやわんやの毎日でした。しかし、ついに夏休みに逃げ込むことができ、やっと 平静な生活を取り戻しています。体重を4Kほど失いましたが、おかげさまで、何とか元気でやっております。

 雨とへぼ用(会議など)にたたられて、今シーズンはテ ニスのチャンスをずいぶんと取り逃してしまいました。このために、コート上では両足が地球にへばり付いたままに なっていて、テニス仲間に左右のの脇を抜かれ放っしです。 しかし、猛烈な暑さのなかで、大汗をかきながらコートを這い回って、夕方、ビールで渇きを癒すのはやはり最高です。

 阪神タイガースが快進撃をつづける嬉しい夏です。涼しい秋の風が訪 れるのももうすぐのことでしょうから、ここはテニスでも大いに頑張って、この酷暑を乗り切りたいものです。神戸大学のMBAスクールの 卒業生から退官記念にラケットをいただきましたので、秋には、この新調のラケットから快音を響かせてみせたいと思 います。

◆日本経営分析学会第21回秋季大会の開催◆

 8月27日(土)10:00より、日本経営分析学会第21回秋季大会を阪南 大学で開催します。統一論題は「環境会計と企業経営評価」であり、キーノートスピーカーとして神戸大学大学 院経営学研究科の國部克彦教授が基調講演を行います。その後、國部克彦教授の司会のもとにパネルディスカッ ションに移りますが、パネラーとしては高崎経済大学水口剛氏、松下電器産業環境本部参事今井伸一氏、田辺製 薬財務部課長河野裕司氏が予定されています。

 今回の全国大会は環境会計問題をメーンテーマにしていますので、日本経営分析学会の会員だけでなく、社会 関連会計学会の会員、日本会計研究学会の会員、日本公認会計士協会近畿会の会員などにも、広く参加を呼びかけて います。また、大学院生の参加も大歓迎であり、参加費、懇親会費ともに、割引きとなっています。

 申込みは当日でも受付けますが、昼食は要注意です。事前の申込みがなされていれば、お弁当が準備されていま すが、当日参加の方はご自分で昼食をご用意いただくほかはありません。夏休中は学内食堂が閉まっているうえに、近隣 に食堂らしい食堂はまったくありません。なお、詳細についてはHPをご覧ください。(左の写真は黒津崎(大分県)のビーチに咲く天然の オニユリ:2005年7月撮影)

◆新しい会社法が成立◆

 新しい「会社法案」が平成17年3月22日に国会に提出されていましたが、6月29日、参議院本会議で自民、民主、公明各党の賛成多数で可決され、成立しました。来春3月の施行が見込まれています。ただし、28日に行われた参議院法務委員会では、原案通り可決されたものの、16項にわたる付帯決議が採択されているといわれています。

 今回の会社法は明治以来の商法典の抜本的改正にあたるもので、会社法制全般にわたって根本的な変革が行われいます。会社の会計規定も大きく変わっています。しかし、その解説は簡単なことではないので、このコーナーでも、何回かに分けて、今後その内容を検討していきたいと考えています。

◆会計研究データベース環境の改善◆

 最近では会計研究用のデータベースが 著しく改善されてきており、実証研究がやりやすくなってきています。たとえばわが国 では「有価証券報告書」が正式の会計データとされていますが、次のサイトからこのデ ータをオンラインで入手することができます。

  ■イーオーエル(eol)

 隣国、中国の財務データについては入手が 困難とされていましたが、最近では、次のサイトにおいて、会計研究のためのデータベース 入手できます。

  ■GTA Information Thecnology Co. Ltd.

 この中国のデータベースでは、マクロデータ、証券市場データのほかに、個別会社の株価、債権 価格のデータがインターネット上で利用できます。

 そのほか、投資家サービスのMoody Invertor Service、ブルームベルグのデータベース・サービスBloombergも有益な 情報源になります。

◆有限責任事業組合(日本版LLP)の創設◆

 「有限責任事業組合契約に関する法律」(平成17年5月6日公布)が 成立し、日本版LLPが設立できることになりました。アメリカのLLPに似ていますが、わが国独特の制度であり、民法の 「任意組合」の特例とされています。その特徴として、次の点が挙げられます。

 (1)有限責任制によっており、出資者全員の責任が出資額の範囲に限定される。

 (2)取締役会と監査役の設置が任意とされており、全組合員による業務執行が予定されている。

 (3)内部自治の原則が尊重されており、組合員の権利と義務をかなり自由に決定できる。

 (4)利益分配においては出資比率に拘束されないから、優先的利益分配を取り決めることができる。

 (5)組合単位の課税ではなく、構成員単位の課税になる。

 (6)労務出資は認められず、財産による出資だけに限定されている。

 有限責任制の事業組織であるから、債権者の保護が重要な課題となるが、格別な債権者保護の措置は講じられていない。ただ、財務内容の公開は不可欠とされており、基本的には自己責任原則によるものと思われる。 事業分野の制限があり、公認会計士などは除外されている。しかし、一般の営利事業はこの日本版LLPによって行うことが できる。(上のカンナ、下のポンポンダリアもともにわがやのもの)

◆収益認識基準の見直し◆

 会社にとって売上高というのは最も大切な会計数値です。 ビジネスパーソンは、明けても暮れても売上高のことを気にしていて、その動きに一喜一憂しているのが実情 です。その売上高を捉える会計基準が、いま大きく変わろうとしています。専門用語でいうと、収益認識 (revenue recognition)の基準が変わるのです。

 会社が毎年発表する売上高は、その会計数値が大きいほど、 会社にとって有利になります。会社の売上高が毎年増えているということは、その会社の製品がどんどん売れて いることを意味していますので、事業が順調にすすんでいるサインになります。事業の展開が順調であれば、投資者は 争ってその会社の株式を買おうとしますし、銀行もよろこんで資金を貸します。製品の販売が伸びている会社には、 優秀な従業員が集まってきます。売上高が伸びている会社は、市場からは「勝者」と評価されますので、市場 競争において何もかも有利になってきます。

 反対に売上高が減少している会社は、市場においては「敗者」 の烙印を押されかねません。売上高が減少しているのは、製品の売れ行きが先細りになっていることを示しています し、製品の売れ行きが落ちてくれば、資金繰りも苦しくなって、いずれは経営破綻ということも考えられます。投資 者も銀行も手を引っ込めますし、従業員も、優秀な者から先に逃げ出すおそれがあります。売上高が減ると、悪 循環がはじまり、ますます経営が苦しくなってゆくのです。

 売上高が増えるのか減るのかは、会社にとっては死活問題です。 売上高は単なる会計数値で、紙の上にプリントされた数字でしかないのですが、このたった1本の会計数 値によって、結果はまるっきり違ってきます。売上高が増えると「勝者」になれるのに、減ると「敗者」にされて しまいます。どのような製品であれ、市場における販売競争は熾烈になりますが、その激越な市場競争に駆り 立てているのは、売上高という会計数値なのです。

 この強い競争圧力の下では、売上高という会計数値をごまか したくなるのは当然の成り行きです。事実、製品が売れていないのに、「売れた」といつわって、根拠のない売上高を 計上する会社は後を絶ちません。この「架空売上」は、わが国では有価証券報告書の虚偽記載として、アメリカでは詐欺 的会計実務として、厳罰に処せられます。今年も、メディアリンク社など、数社がこの「架空売上」で摘発されているの は、新聞報道のとおりです。

 アメリカにおいてネットバブルが盛んなころ、怪しげな売上高の 計上がドットコム会社の間で流行しました。バブル崩壊後になって、その多くが「会計不正」だと指弾され、強い社会的 な批判にさらされるようになったのです。ドットコム会社における変則的な売上高の計上は、「架空売上」というよりも、 現存の会計ルールの抜け穴を潜るもので、会計ルールの裏をかくという点に特徴があります。売上高は大幅に膨らま されているのに、会計ルールには明白には違反しておらず、処罰しようにも処罰できない巧妙な手口によっているのです。

 アメリカのSECではこの情況を受け、従来の収益の認識基準を整理しな おし、会計ルールの厳格な適用をはじめました。その新会計ルールがSOB101(SEC, Staff Accounting Bulletin No.101, Revenue Recognition,1999)です。(右のハスは、神戸大学六甲台キャンパス の中庭の池のもので、2003年ごろ撮影)

 SOB101は従来と同じ考え方によっていますので、「実際に売れたときに」、 「実際に売れた金額で」、売上高を計上するという点はまったく変更されていません。しかし、その運用ルールにおいて、 「売れた」かどうかを判定する厳格な規準を定めましたので、大きな波紋が拡がっています。この新ルールによると、従来 では「売れた」とされていたものが、「まだ売れていない」と判定され、売上高の会計数値が大幅に下がるケースが続出した のです。また、そもそも商品の販売事業に従事していないとして、総額による売上高の計上を否認され、売上高の会計数値が 激減するケースも多数でてきました。

 メーカーとか卸が小売りに対して「売れなければ返品してよい」と約束す るのは、特に日本企業においては、ごくふつうの取引慣行です。しかし、SOB101によれば、この返品条項のついた販売は、 将来における販売契約の取消しを含むものであり、販売対価の売掛金も修正される可能性がありますので、「まだ売れてい ない」と判定されます。この種の販売取引は委託販売の一種とされ、受託者の小売りが顧客に販売する時点まで、委託者の メーカーや卸の売上高の計上が繰り下げられます。

 日本の総合商社などにおいては、売り手と買い手の取引を斡旋して、数% のコミッションを受け取る場合でも、「いっったん売り手から商社が仕入れ、次に商社から買い手に販売した」として、総額で 売上高を計上するのが慣行になっていました。いわゆる「代行販売」、「代行調達」でも、商社がリスクを取っているとして、 取引の総額を売上高に計上しています。しかし、SOB101によれば、これは販売や調達の取り次ぎでしかないということになり ますので、数%のコミッションだけが売上高に計上されます。このため、総合商社や卸売りの売上高は激減することになりま す。

 なおFASBでも収益認識に関する新ルールを検討中だといわれていますが、 最近におけるこのFASBの動きについては、次のサイトを参照されたい。

◆花のデジカメ写真を公募します◆

 このサイトに掲載する花のデジカメ写真を公募します。四季の花、めずらしい花、 印象的な花など、こころに残る花があったら、デジカメ写真に収め、eメール(oakbe@obenet.jp)に添付して送っていただけませんか。手塩にかけた自慢の園芸作品でも、散歩の路辺でみつけた野の花でも結構です。青葉や紅葉、森や林、川や海など、景色でも よいのではないでしょうか。

 「花を撮る」というのは、案外に難しく、ついさっきまできれいだったのに、カ メラを持って戻ってみると、花がしおれていたりします。いかにカメラが高級でも、手ぶれなどで、かわいそうな花に化けることも あります。しかし、幸いなことに(実に、幸いなことに!)、ハイパーテキストに組み込んで、インターネットに乗せると、どれも これもそこそこ見栄えのするものにみえます。これはたぶんは、インターネットの画像処理が乱雑で、あまり手の込んだ細工をして ないことによるのだろうと推測しています。とすれば、上手いも下手のもあまり関係ないわけですので、身近な花の写真を送っていた だけますと、助かります。

 ただ、花には季節性がありますので、送っていただいたデジカメ写真の花とこのサイト の更新時期がマッチするかどうかの問題はでてきそうです。しかし、四季は巡ってきますので、ファイルをディスクにため込んでおいて、翌年に「開花」させるいうことも考えられます。花のデジカメ写真がある程度溜まった段階で、「花のデジカメ写真展覧会」をインターネット上に開くことも考えています。

◆次回の更新◆

 いよいよ本格的な夏です。7月末には試験監督で2-3日の出校が必要となりますが、 その後は夏期休暇です。8月初旬にはシリコンバレーへ1週間程度の調査旅行にでかけますし、帰ってからも、やりたいことが山ほど あります。みなさまにおかれましても、くれぐれもご自愛のうえ、素晴らしい夏の日々をお楽しみください。次回の更新は10月を予 定しています。ご機嫌よう。さようなら。


2005.07.25

OBENET

代表 岡部 孝好

okabe@obenet.jp