
A Message from Webmaster
to New Version(April 10, 2005)
2005年04月版へのメッセージ
OBE Accounting Research Lab
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[1995年10月 ラボ開設のご挨拶][
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◆花の春◆
桜の花が咲き乱れる陽春のころとなりました。ことしは暖冬といわれながら、かなり寒い日もありましたが、ようやく春です。春の陽を浴びながら、テニスコートですごす気分は最高です。
学期末のあわただしい日々のあと、そのまま新学期が始まってしまいました。大学では「春休み」ということばが、もうなくなったのかもしれません。あいかわらず元気で走り回っていますが、みなさん、ごきげんいかがでしょうか(写真は自宅付近の桜)。
◆神戸大学を停年で退官◆
2005年3月31日をもって、停年により神戸大学を退官し、神戸大学名誉教授の称号を頂戴いたしました。着任は阪神大震災の前年、1994年のことでしたから、11年間、神戸大学経営学研究科の教授として、研究と教育の生活をエンジョイしてきたことになります。
神戸大学のルーツは神戸高商ですが、この神戸高商は明治35年(1902年)5月に、日本で2番目の国立の高等商業学校として創立されています。以来、103年間、神戸大学経営学研究科は、日本におけるビジネス教育のトップスクールとして輝いてきました。わたしの在任期間の11年は、1世紀以上にもわたるその神戸大学経営学研究科の歴史の10%以上にもあたる計算ですので、けっして短くはなかったわけです。学部と大学院の学生時代を加えると、神戸大学経営学研究科の歴史とのかかわりは、もっと長かったことになります。母校の神戸大学で、充実した学究生活を送れたことの幸せを、いま噛み締めているところです(下の写真は六甲台法学部前の階段脇の桜)。

学部の税務会計、学部のゼミはずいぶんと楽しいクラスで、わたしのトレードマークの「愉快な会計学」を地で行くものでした。大学院のMBAスクールの財務会計応用研究とか演習もエキサイティングなクラスで、学生たちとの議論をずいぶんと楽しむことができました。PHDコースにおける実証会計学の講義も、わたしのアイデアや考えを深めるのに大いに役立ちました。わたしにとってはもともと研究と教育はシームレスにつながっていますが、神戸大学での教育活動は、研究の前進にきわめて有益だったと思っています。
先輩、同僚、後輩の先生方はもとよりとして、助手のみなさん、事務職員のみなさん、学生のみなさんにも、たいへんお世話になりました。楽しい神戸大学の生活を支えていただき、深く感謝しております。
4月1日からは阪南大学経営情報学部に教授として勤務し、ひきつづき会計学のの研究と教育に従事します。阪南大学というのは大阪南部の松原市にあって、梅田から天王寺(阿部野橋)に出て、天王寺から近鉄南大阪線の鈍行で5ー6個目の駅です。大学は文社系の4学部と1大学院のこじんまりした学校です。気分を一新して、頑張りたいと思っています。
◆ホームページの引越しとメールアドレスの変更◆
大学を変わるのはたいへんなことで、本をダンボールに詰め込むだけで、1週間ほどかかりました。新しい研究室にダンボールは着いたものの、それを開いて、棚に本を並べる作業はこれからのことです。たぶん、夏まで片付かないでしょう。

この「財務会計ラボ」は早めに引越しを終え、いまはレンタルサーバーの上で、http://www.obenet.jp/というドメイン名で開店しています。obeというのは、「kobeのkなし」、「okabeのkaなし」ですが、正式にはOcean Business Empowerment Networkとして登録されています。「財務会計ラボ」は開設してから10年が経過していましたので、ファイルが延べ3Gにも膨れており、それを引越すのにも大汗をかきました(右の写真は滝川記念館前の桜)。
新しいwebサーバーは音声ファイルがサポートされていませんので、残念
なことですが、「音なし」になります。またデータベースの検索もサポートなしということですので、会計文献データベースは自分の個人サーバーによることになります。このサーバーも、さいふをはたいて、DELLを買いました。その設定も数週間かかる見込みです。
ホームページ上でメールアドレスを公開していた関係で、最近はジャンクメールが激増して、毎日匿名の人から届く30ー40通ものメールに手を焼いていました。メールアドレスも一新されましたので、これからは新しいアドレスだけを使うことにします。ご愛顧いただいた旧メールアドレスのokabe@kobe-u.ac.jpとは、さようならします。
◆「神戸大学おかゆめ会」の開催◆
神戸大学岡部ゼミ卒業生は「神戸大学おかゆめ会」に参集することになっていますが、この会はこれまでまったく休眠状態で、同級生でも顔を会わせる機会がほとんどありませんでした。このたび指導教官が神戸大学を退官することになりましたので、6月にその総会を開き、久しぶりに集まって、歓談したいと思います。関係者はお集まりください。MBAスクールではさっそく祝賀会を開いていただきましたので、今回のは、それ以外の関係者ということになります。
会員名簿が不備で、通知が届かないケースも多いと予想されますので、それぞれで誘い合い、参加していただけると助かります。日程と場所は次を予定しています。

1.岡部教授神戸大学退官記念講演会
日時 2005年6月18日(土) 18:00-18:50
場所 神戸大学大阪経営教育センター
大阪市北区中之島1丁目2-10
大阪府立中之島図書館別館
Tel: 06(6201)8668/Fax: 06(6201)8687
Web: http://www.riam.jp/
2.岡部教授神戸大学退官祝賀会
日時 2005年6月18日(土) 19:00-21:00
場所 スーパードライ梅田(予定)
大阪市北区西天満4−15−10 ニッセイ同和損保フェニックスタワーB1
なお関大時代の岡部ゼミ生が集う「関西大学おかゆめ会」も別個に開催することがが予定されていますが、その日程は、7月になりそうです。
◆EDINET◆
会計情報のディスクロージャーは有価証券報告書を内閣府、証券取引所、証券業協会へ提出し、その後に一般の縦覧に供する方式によっていますが、2004年6月より電子ベースに完全移行し、コンピュータとコンピュータの間で受渡しが行われることになっています。有価証券報告書の提出会社のコンピュータ、内閣府のコンピュータ、証券取引所と証券業協会のコンピュータがEDINET(Electronic Disclosure for Investors’ NETwork)という名称のネットワークに統合されていますから、提出会社が有価証券報告書をEDNETに登録すると、内閣府のサーバーに磁気的に記録され、ただちに証券取引所、証券業協会を含む市場関係者による閲覧が可能になります。法律用語では「開示用電子情報処理組織」ということばが使われますが、それはこのEDINETのことです。

内閣府に磁気的に登録された有価証券報告書は公開されていますから、投資者は世界のどこからでも、また24時間いつでも、有価証券報告書を入手することができます。アメリカに比べると10年以上も遅れてしまいましたが、わが国でも、やっとネットワーク環境が整ったことになります。これは大きな進歩で、利便性は飛躍的に向上しました(左の写真はわが家のジャスミン)。
このEDINETによるディスクロージャーは強制的なシステムですが、会社においてはそのほかに自発的な開示を行っています。その重要なツールがホームページで、各社は競ってホームページにIRコーナーを設け、会計数値を載せています。英文のアンニャルレポートを公開している会社も、いまではめずらしくなくなっています。
◆アメリカの会計基準設定主体が組織を再編◆
アメリカでは、会計基準の改変が素早く、問題が発生すると、すぐに新しい会計基準によって対処します。このスピーディな動きが世界を牽引するパワーを生んでいます。
しかし、アメリカにおいてはいくつかの会計基準設定主体が同時に動いていて、相互の関連が複雑になっています。アメリカでは「一般に認められた会計原則」(GAAP)が最も基本的な会計ルールですが、このGAAPを決めている機関としては少なくとも次の4つがあります。

FASB: Financial Accounting Standards Board: 常設の会計基準設定主体で、最も基本的な第三セクター。FASB Statement, Interpreation, Technical Bulletinを出す。
AcSEC: AICPA's Accounting Standards Executive Committee: アメリカ公認会計士協会の上級機関で、特定業界の会計問題などを取り扱っている。AcSEC Statements of Position and Industry Audit and Accounting Guidesが代表的な指針.
EITF: Emerging Issues Task Force: 緊急会計問題への対処とか会計実務の多様性への対応を取り扱う。EITF Consensuses.
SEC Staff:証券取引委員会の部局であり、 Staff Accounting Bulletins, Accounting Series Releases, Financial Reporting Releasesなどを発刊する。
国際会計基準との協調にあわせて、これらの多数の基準設定主体を一本化する作業が始まっています。FASBが最も基本的な機関であるから、他はFASBに統合されるとみられているが、最終的にどのようになるかはこれから決まることです。この夏に作業がすすむものとみられています。
(参考文献)Herz, Robert, "Commentary: A Year of Challege and Change for the FASB,"
Accounting Horizons, Vol.17, No.3 (September 2003), pp.247-255.
◆メリーゴーラウンド(再)◆
インターネットのメディア・リンク社が粉飾決算(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で大阪地検特捜部に摘発されたと報道されているが、その手口は「メリーゴーラウンド」。これはアメリカでも、ネットバブル期に頻発した手口である。
A社がB社に商品を販売すると、販売金額がA社の売上高になる。同じ商品をB社がC社に販売すると、販売金額がB社の売上高になる。最後に、C社がA社に同じ商品を販売すると、販売金額がC社の売上高になる。商品をA社からB社へ、B社からC社へ、C社からA社へ「タライマワシ」にして、A、B、Cの3社において売上高を計上するこの方式がメリーゴーラウンドである。
メリーゴーラウンドでは、商品は元に戻って、A社の倉庫に帰っている。だから、A社からみると、返品みたいなものである。しかし、タライマワシを成り立たせるには、B社とC社の協力が不可欠であるし、B社とC社の協力をうるには、両社にマージンを落とさなければならない。このマージンを負担するのはA社であるから、A社では大きな代償を支払って、売上高を増やしたことになる。刑事罰を別にして、これが粉飾決算という裁量行動のコストになる(写真はわが家のボタン)。

メディア・リンク社の事件では、実際には商品は動いておらず、伝票だけが回っている。この点で、完璧な架空取引である。しかし、商品が3社の間で輸送されていても、会計上ではなおも重大な問題が残されている。最終的にA社に商品が戻ってきたときに、この商品は「仕入れ」とされており、しかもその仕入価額は最初の販売価額よりはるかに高くなっている。B社とC社に支払ったマージンの分だけ、仕入価額が、したがって在庫(棚卸資産)の価額が膨らんでいる。これは資産の過大計上にあたる。
単純な粉飾決算では、A社がまず自分で倉庫を借りて、そこへ商品を運び込む。そして、商品が販売されたとして、架空の顧客に向けて伝票を切って、売上高を計上する。次に、翌期になってから、倉庫の商品をA社に持ち帰り、架空の顧客からの返品があったという会計処理を行う。この返品は売上高の訂正であるから、2期に跨るとはいえ、売上高が正しい金額に修正される。しかし、メリーゴーラウンドでは、売上高は永久に修正されない。その代わりに仕入高と在庫が操作されるが、その金額も正しい金額ではないし、将来に訂正される見込みもない。メリーゴーラウンドが、きわめて悪質な手口だといわれる理由はここにある。
◆次回の更新◆
次回の更新は6月の予定です。絶好の陽春。ご健康にご留意のうえ、春の日々をお楽しみください。
2005.04.10
OBE Accounting Research Lab
代表 岡部 孝好
okabe@obenet.ne.jp

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