A Message from Webmaster

 to New Version(September 30, 2004)




2004年09月版へのメッセージ


OBE Accounting Research Lab



Back Numbers

1995年10月 ラボ開設のご挨拶

ウエブマスターのプロフィール(Profile Information) [in English]

Webmasterからのメッセージのバックナンバー[Backnumber]


◆台風一過◆

 9月には、気持ちのわるい横揺れの地震が2回あり、その1回目では、逃げ道のドアを確保しておくために、玄関まで走りました。震災のとき、家が傾いてドアが開けられないために、多くの方が火事にやられたのを、とっさに思い出したのです。その後、強烈な台風にも見舞われ、六甲台キャンバスではいまだにバラバラと落葉がつづいています。台風18号が神戸港の潮風を激しく 吹きつけたために、塩害で葉っぱがやられ、松、楠、桜、楓などの枝が黄色に変わり、その先から枯葉が舞い降りて いるのです。これでは、ことしの紅葉はダメかもしれません。ですが、六甲台はあいかわらず活力いっぱいで、わた しも元気に、走り回っています。みなさん、ごきげんいかがでしょうか。

   

 神戸大学は昔からセメスター制によっていて、前期と後期がはっ きりと区分されていますが、ここ数年来、大学のカレンダーが修正されていて、9月末までが夏休み、10月1日から が授業開始となっています。このため、9月の後半は後期の授業に向けて準備する時期に変わってしまい、夏休みはすで に終わった感じです。世の中はしだいに気ぜわしくなってきており、ややあわただしい気分で、六甲台に通っています。 この暑さですから、徒歩はあきらめて、阪急六甲からの上りは、バスを使っています。

◆10周年記念とサイトの引越し◆

 この「神戸大学財務会計ラボ」は震災の年1995年に立ち上がりまし たので、来年の2005年に10周年を迎えることになります。当時はインターネットがまだめずらしいころで、ホームペ ージなどは、マニアかプロのおもちゃとみられていましたので、先行き10年も、このサイトがつづくとは誰も考えて はいなかったのではないでしょうか。わたし自身も、これほど長く、みなさんにお付合いいただけると思ってもいません でした。しかし、事実としてこのサイトは、いまも生きつづけており、来年は晴れて10周年です。アクセスもだんだん増え てきており、月2000を超えています。台湾、中国からのアクセスも、最近では少なくありません。

 やや自慢話めいてきますが、このサイトには国会図書館などの公 的なホームページからリンクが張られています。会計学関連の団体や大学の研究室からのリンクも、数えられないほ どあります。ヤフーの検索でも、「会計」と打ち込めば、まっさきにこのサイトが、めがねの推奨マークつきで、出 てきます。過去10年の間に、このホームページは広く知れ渡り、みなさんに頻繁に閲覧していただいています。本当 にありがたいことですので、これからも、頑張って更新をつづけていきたいと思っています。

 しかし、問題もあります。差し迫った問題として、サーバの設置 場所を移転するという重大問題を抱えています。これまでは、神戸大学のわたしの個人研究室に置かれたNEC5800シリー ズをWWWサーバにしていて、このプラットフォームからコンテンツを世界中に発信してきました。WWWサーバといって も、それはワープロ用のパソコンとしても使われていますから、ワープロでつづったドキュメントをインターネット にそのまま公開できるという便利さがあったことはたしかです。学生に教材を手渡す場合でも、ワープロの原稿を公開 用のディレクトリーに移すだけで、簡単に片づけることができます。しかし、無人の部屋で、24時間、マシンを回しっぱなしにして いますので、いろいろなウイルスが侵入してきて、いたずらをして逃げるのです。最近のウイルスは自力で感染を拡 げますので、無人運転はきわめて危険です。そこで、悩みに悩んだ末に考えついたのが、レンタル・サーバの借用で す。クボタの子会社、ファーストサーバ(株)に頼んだところ、たった100MBのディスク付きですが、よろこんで貸し てくれました。新しいアドレス(URL)は、www.obenet.jpとなります。obenetというのは、kobeのkなし、okabeのkaなし です。

 ハッカーは最新技術を駆使しますので、ハッカーの攻撃から防衛す るのは最新のコンピュータ技術を勉強するのに役立ちます。新聞では個人情報の漏洩などに大騒ぎをしていますが、 そういう事故の発生を避ける新技術を研究するのも、ビジネス研究においては大切なことです。事実、コンピュータの セキュリティに関連しては、多数の新規事業が立ち上がってきています。しかし、安定したWWWサービスを提供するこ とも大切なことですので、この際思い切って、サイトを引っ越すことに決定しました。サイトを引っ越すとIPアドレス が変わりますので、「お気に入り」の登録を貼りかえていただかなければなりません。10周年記念の引越しですので、 よろしくお願いします。

◆有限責任事業組合(LLP)という新制度の創設◆

 株式会社は有限責任制(limited liability)になっていて、会社の純財産が枯渇して、債権者に対して会社が負債を弁済できなくなっても、株主(会社の所有者)は会社の負債を肩代わりする必要はないことになっています。これに対して、パートナーシップ(partnership)というのは個人の寄合い所帯であり、民法上の任意組合(事業組合)とされていますので、パートナー(所有者)は無限責任を負っています。パートナーシップが行き詰まったときには、パートナーはパートナーシップの負債に対して、最後の1円まで、責任を負わなければならないことになります。

 有限責任の株式会社では、放縦な運営が行われる危険があり、このため商法によってタイトな規制が加えられています。この強い規制は株式会社のステークホルダー(特に債権者)の利害を保護し、株式会社の信用を補強していることはたしかですが、他面において、株式会社の設立と運営をむつかしくしているという現実があります。ベンチャーなどが株式会社によって事業展開するのが、容易でないのです。

 他方、パートナーシップは任意の事業組合として簡単に設立できますが、規制がないだけに実態がまちまちで、社会的な信用にも欠けるうらみがあります。そのうえ、パートナーには無限責任が負わされているために、リスクが大きすぎて、パートナーになるのを躊躇する傾向があります。パートナーシップが破綻すると、債権者がパートナーの自宅まで押し掛け、個人の財産を差し押さえるおそれがあるのです。

 来年の通常国会で法制化されるといわれる有限責任事業組合のLLP (limited liability partnership)というのは、株式会社とパートナーシップとの中間的な形態で、有限責任のパートナーシップ制を導入しようとするものです。旧来のパートナーシップと同様に、個人ベースのパートナーによって、簡単な手順によって事業が創設できるようにする一方で、パートナーの責任を一定限度に抑え込むのがLLPです。株式会社とパートナーシップとでは税制にも違いがありますが、LLPでは法人ベースではなく、個人ベースで納税が行われる予定です。

 LLPのパートナーは、すべてが有限責任となるわけではありません。アメリカの制度を参考にするとすれば、一部のパートナーだけが有限責任となって、他の一部のパートナーは無限責任となります。有限責任のパートナーは責任が軽減されますが、無限責任のパートナーはその軽減された責任まで背負い込むことになりますから、旧来よりも責任が重くなる可能性があります。

 LLPにおいては、所有者が有限責任のパートナーと無限責任のパートナーに別れますが、問題なのは両者の間における役割の配分です。重い責任を負うのは無限責任のパートナーですから、この無限責任のパートナーが大きな意思決定権限を握り、事業の切盛りにあたることになります。事業成果の分配にはこの意思決定権限と事業運営責任の違いが反映されるはずですから、事業がうまく行ったときには、無限責任のパートナーの方が多くの分け前を受け取るという結果になりそうです。この分配ルールは、ハイリスクにはハイリターンの原則にかなっていることになります。

◆ターンアラウンド・マネジャー◆

 会社が破綻の危機に直面したとき、破綻会社に乗り込み、現経営者に代わって、危機の管理と会社の立直しにあたる専門職業人がターンアラウンド・マネジャー(turnaround manager: TM)と呼ばれます。会社が破綻の危機に瀕すると、クライシス・マネジメントの専門知識をもつTMでなければ、差し迫る窮境を乗り切り、会社の再生を図ることはできないからです。TMの主な役割は旧来の経営方針を大転換し(turnaround)、倒産を回避することにありますが、ポイントはむしろ会社の立直しにあり、債権者との交渉、再建計画の立案、支援先スポンサーの選定などをすすめて、会社を蘇生させるのが任務です。

 会社が破綻すると、怒り狂った債権者が押し掛け、1円でも多く、債権を回収しようと します。この債権者をなだめて、会社の債務を切り捨ててもらわねば、会社の再建はできないわけですから、この仕事だけでもたいへん です。そのうえに、スポンサー企業の選定が加わります。破綻会社では債務超過(負債の総額が資産の総額よりも多い状態)になってい ますので、旧株主の持分は枯渇しており、株価はゼロになっています。この状況では、スポンサー企業に資金を注入してもらわないと、 資本金がなく、会社の再建ができないことになります。そこで、スポンサー企業に会社(あるいはその一部)を買い取ってもらって、その代価を新資本金にしようとします。しかし、ボロ会社に資金を注ぎ込もうとするスポンサー企業はどこにでもいるわけではないので、 この選定もたいへんなことになります。

 TMは緊急時の臨時的な経営者であるために任期は短く、会社がほぼ正常な状態に復すると、新経営陣にバトンを渡して退任します。TMは債権者の推薦を受け、現経営陣によって選任されるのがふつうですが、その契機となるのは財務制限条項への違反であり、最近では財務制限条項のなかにTMの選任規定が含まれていることも少なくないといわれています。

◆民事再生におけるDIPとDIPファイナンス◆

 アメリカの倒産法はチャプター・イレブン(Chapter 11)といわれますが、その基本的な考え方をなすのは当事者主義であり、倒産と再建の処理は、原則として当事者である債権者と債務者の協議によって行われます。破綻会社の債務を処理するのは、裁判所が選任する管財人ではなく、債務を負う破綻会社の経営者自身です。債務者の主導によって行われるこの負債処理の手順がDIP(debtor-in-possession)と呼ばれています。

 破綻会社を再建するには、従来からの取引関係を維持し、事業の継続によって財産の散逸と企業価値の毀損を防止することがきわめて重要になります。信用が崩壊している破綻企業において、この取引関係の維持を図るとすれば膨大な資金需要が発生します。破綻前の負債は凍結されるにしても、すべて現金払いでないと、誰も取引におうじてくれないからです。

 この臨時的な資金需要をまかなうのがDIPファイナンスです。債務者が主導するDIP手続きのもとでは、債務者が資金供給者のDIPレンダーを探しだし、そのDIPレンダーの資金によって事業の再生を図ることになります。このDIPレンダーとなって、緊急資金の貸し手になるのは、しばしば破綻会社を買収するスポンサー会社です。

◆六甲台図書館の新館が完成(再)◆

 六甲台図書館(社会科学系図書館と改称)は本館の裏側に、地下2階、 地上8階の新館を建築中でしたが、このほどほぼ完成し、近く竣工式を行なうことになっています。図書館は地下2階を 書庫に、地上2階を閲覧室、サービス・カウンターなどに使います。地上3階以上は、教官の研究室、院生の研究室、小教室、 会議室などに充てます。

 9月初旬から図書の引越しが始まり、これにともないやや長期に閉館となり ますので、その間の不便に耐える必要があります。しかし、これよりもっと影響が大きいのが景観のことです。岡部研究室 は図書館の南側の第4 学舎の5階にあり、北側には六甲山の山並みが望めましたが、図書館の新館がグランドの前に聳え立ったために、六甲山は まったく見えなくなってしまいました。

◆次回の更新◆

 秋の好シーズンを迎えることになります。よい日々を健やかにおすごしください。 次回の更新は12月を予定しています。ごきげんよう。


2004.09.30

OBE Accounting Research Lab

代表 岡部 孝好

Graduate School of Business Administration

okabe@kobe-u.ac.jp

okabe@kobebs.ne.jp