A Message from Webmaster
to New Version(July 1st, 2004)
2004年07月版へのメッセージ
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1995年10月 ラボ開設のご挨拶
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Webmasterからのメッセージのバックナンバー[Backnumber]
◆夏休みがすぐそこに◆
◆SOPATの開催◆ 過去20年にわたり、実証会計学の中心的なテピックスをなしてきたのは、"Accounting Accruals"でした。
この"Accounting Accruals"には、「発生処理高」とか「発生高」という訳語があてられていますが、定義上、
その意味は明白で、会計上の当期純利益から(営業活動からの)キャッシュフローを差し引いた残余です。
しかし、この"Accounting Accruals"を使った実証研究は、膨大な数の実績が積み上げられているにも
かかわらず、あまりはかばかしいものとはいえないのです。実証研究の結果がまちまちで、多様な解釈が生まれ
ています。
今回の研究会では、この"Accounting Accruals"による実証研究がどこまで進展し、どこに問題があるの
か明らかにすることにターゲットを定めており、テーマも
"A Battle with a Demon Named as 'Accounting Accruals'"となっています。デーモンというのは「怪獣」
のことで、その正体を暴きたいというわけです。
最近の研究によると、"Accounting Accruals"は株式市場に何らかのメッセージを伝達している可能性が
あって、この点ではかなり積極的な意味があることがわかってきています。正体は不明であっても、
"Accounting Accruals"には投資者に有益な情報をコミュニケートしている形跡があるのです。今回の研究会
ではこの可能性をも追求して、新しいフロンティアがどこにあるのかたしかめたい、と思っています。
SOPATは6月26日(土)、7月10日(土)の2日間、神戸大学六甲台キャンパス本館3階会議室で開かれ、そ
のプログラムはインターネットに公開
されています。
◆大阪中乃島のサテライト教室は盛況◆
◆六甲台図書館の新館が完成◆
六甲台では、梅雨の合い間に、強い夏の太陽が降り注いでいます。7月中旬から前期の期末試験が始まり、
それが終わると、いよいよ夏休みにはいります。夏休みは9月末までですが、8月末から大学院入試、MBAスク
ールの論文審査などが挟まりますので、最近では、あっという間に夏休みが飛びすぎてしまいます。予定の時期より
アップデートが遅れてしまいましたが、みなさん、ご機嫌いかがでしょうか。
週末には雨の日が多く、今年の梅雨期は、テニス
は日和に恵まれませんでした。しかし、そのお蔭で、手首やひじの痛みは消えてしまいましたので、故障を治
すには絶好の季節となったのかもしれません。太陽の輝きが戻ってくると、いよいよコートで大汗をかくことに
なります。
最近では、会計学も大きな変化の渦に巻き込まれて
おり、フォローアップを怠ると、取り残されてしまいます。そこで、久しぶりに、実証会計研究会を開い
て、新しい動向を勉強することになりました。実証会計研究会はSOPAT ともいいますが、この英語のニック
ネームは Seminar of Positive Accounting Theoryの略称です。
MBAスクールでは平日夜間講義に、中之島のサテライト教室を
使っています。社会人学生の大半が大阪市内に職場をもっていて、仕事を終えてから六甲台に通学するのはあまりにロス
が大きいということで、大阪府立中乃島図書館の付属ビルをサテライト教室として借り上げているのです。
この大阪サテライト教室は平日の昼間、土日は空いていますので、
稼働率が低くなるのでは、と心配されていました。ところが、土曜日の利用者は多く、学会、ゼミ、研究会などで、
7月はほとんどが塞がってしましました。足場がいいことがその理由でしょうが、教室の使い勝手もなかなかの評判です。
嬉しいことです。
六甲台図書館(社会科学系図書館と改称)は本館の裏側に、地下2階、
地上8階の新館を建築中でしたが、このほどほぼ完成し、近く竣工式を行なうことになっています。図書館は地下2階を
書庫に、地上2階を閲覧室、サービス・カウンターなどに使います。地上3階以上は、教官の研究室、院生の研究室、小教室、
会議室などに充てます。
9月初旬から図書の引越しが始まり、これにともないやや長期に閉館となり
ますので、その間の不便に耐える必要があります。しかし、これよりもっと影響が大きいのが景観のことです。岡部研究室
は図書館の南側の第4
学舎の5階にあり、北側には六甲山の山並みが望めましたが、図書館の新館がグランドの前に聳え立ったために、六甲山は
まったく見えなくなってしまいました。
◆またも、ゼネコンの会計不正◆
会社再建中の森本組が公共工事の契約書を偽造し、それを担保に
銀行から資金を引き出した詐欺事件が新聞に報道されています。存在しない売掛金を、銀行に譲渡しているのですから、
単純な不正事件で、ふうつであれば、だまされる方がわるいともいえるケースです。
しかし、この不正事件の背景には、日本的な仕組み見え隠れしています。
日本の建設業界にはタイトな産業規制があって、建設業が大臣の許認可制のもとにおかれています。そのうえ、公共工事に
かんしては「経営事項審査」が行なわれており、一定の要件を満たす会社でなければ、入札資格が与えられない仕掛けにな
っています。この資格審査に使われるのが会計数値であり、たとえば売上が下がると、受注がだんだんとむつかしくなってきます。
このため、建設業者は、売上を上げることに必死となって、採算を度外視しても、受注を急ぐ傾向があります。
報道によると、今回の森本組の事件では、受注資格を維持するために、
架空の売上を計上し、この架空売上にともなう架空売掛金を銀行に対して「債権譲渡」していたということです。売上というのは
最も基本的な会計数値ですが、あきれたことに、この売上が架空のものたったというのです。
◆GIFアニメーション◆
GIF(Graphic Interchange Format)というのは、イメージ
ファイルの標準的形式の1つで、インターネットでは最も馴染みの深いファイル形式です。もともとCompuServeと
いうアメリカのパソコン通信会社によって開発されたもので、1987年にはその基本的なスペックが出来上がって
いたといわれています。インターネットが普及するよりも前のことです。
静止画像をインターネット上で送受信するには、
GIFファイル形式が最も簡便でしたので、ホームページに写真とか図表を載せる場合には、イメージ・
タグを用いて、このGIFファイルを埋め込んできました。デジカメの爆発的な普及につれて、Eメール
写真ファイルを添付するのも一般化していますが、そのファイル形式も多くがGIF(かJPEG)です。
ホームページ上において広告をチカチカさせるバナーは
画像ファイルですが、これは4−5枚の静止画像を組み合わせたアニメーションです。タイガースの旗が風に
揺らいだり、ボート上の人形がオールを動かしたりするのも、静止画像の組合わによるアニメーションです。
これらのアニメーションは、その多くがGIFファイル形式になっています。
アニメーションはインターネット上にますます増殖する
傾向がありますが、そのファイル形式は、多くがGIFによっています。このGIFアニメーションの基本
スペックは1987年の「GIF87a」と1989年の「GIF89a」であり、その後、ほとんど変更されていないというこ
とです。驚いたことに、インターネットが普及するよりはるか前において、アニメーションを動かすGIFアニ
メーションの技術は完成していたのです。
◆日本の素材市場の価格交渉◆
素材市場と呼ばれるのは鉄鋼、セメント、ガラス、石油、紙、石炭、半導体、ポリスチレン、エチレン、合成樹脂などを取引するマーケットで、買い手も売り手も会社となります。たとえば鉄鋼の場合には生産者は高炉メーカで、需要家は自動車メーカ、造船、建設などの会社になります。メーカーには営業部隊がいますが、通常はメーカ系の指定商社、指定特約店が流通を担当し、需要家に向けて激しい売込み競争を展開します。
景気の回復を受けて、最近では素材価格がじりじりと上がってきていますが、その価格交渉がみものです。グローバル化で国際価格に引きずられる程度が大きくなっっているものの、この価格交渉には日本的取引慣行が残っており、密室の中で、あの手この手の激しいやり取りが行なわれているもようです。価格交渉ではメーカが指導力を発揮するといわれてい
ますが、需要家の交渉力も強烈で、値上げには強く抵抗します。交渉は相対(あいたい)で行なわれますので、閉鎖型の取引になって、簡単には勝負が決まらないのです。
市場開放とか国際市場化などといわれながら、日本の素材市場におけるこの価格交渉
は、そのほとんどが未解明です。この価格交渉には、事後調整(事後値引き)、累進リベート制、商権と手数料(口銭)の授受、
手形決済などが絡んでいて、会計学の立場からも研究のテーマが多いのに、まだ十分な検討がなされていないのが実情です。素材価格が
じりじりと上がっているいまが、その研究の好機だといえます。
◆次回の更新◆
いよいよ本格的な夏です。くれぐれもご自愛のうえ、夏の日をお楽しみください。
次回の更新は9月を予定しています。ご機嫌よう。さようなら。
2004.07.01
神戸大学財務会計ラボ
代表 岡部 孝好
Graduate School of Business Administration
okabe@kobe-u.ac.jp
okabe@kobebs.ne.jp