A Message from Webmaster

 to New Version(March 31, 2004)




2004年03月版へのメッセージ



Back Numbers

    1995年10月 ラボ開設のご挨拶  ウエブマスターのプロフィール(Profile Information) [in English]

   Webmasterからのメッセージのバックナンバー[Backnumber]


◆六甲台では桜が満開◆

 六甲台は春の盛りです。咲き乱れる桜の下で、新入生を迎えようとしています。 みなさん、ご機嫌いかがでしょうか。

 岡部ゼミでは、学部では昼間主コースと夜間主コースに卒業生がいましたし、 修士課程でも3名の修了者が巣立っていきました。例年のことですが、賑やかな 卒業風景は楽しいものです。

 ことしは暖冬で、雪らしき雪もなかったのに、風邪がはやって、わたも1月下旬 には熱を出して、3週間もテニスを休むハメになりました。しかし、いまは元気いっぱいに 新学期を迎えており、4月からの講義の準備を始めています。MBAスクールでは、土曜日集中講 義の先発投手となりますので、10日(土)からの全力投球に向けて、ウォームアップをすす めています。MBAコースの土曜日集中は、朝の9:00から夜の5:00までですので、準備がたい へんなのです。

◆北京への旅◆

 神戸大学経営学研究科では「21世紀COEプログラム」の一環として、中国、北京に 新しい研究教育拠点「中国コラボレーション・センター」を開設することになり、 3月5日にその開所式が行われました。

関西空港を3月4日の朝に発って、3時間余り で、北京空港へ。黄砂がけむる高速道路を降りると、そこはもう高層ビルの立ち並ぶ 北京のダウンタウンで、宿舎の長富宮飯店も天安門のすぐ近くにあることがわかりました。中国へ は初の旅で、ものめずらしい光景も多数ありましたが、大阪の街と錯覚するほどに、 日本的な雰囲気を感じました。漢字が頼りになるのが、なりよりも嬉しいことです。

 開設記念シンポジウム(司会)と祝賀パーティを無事に終えて、翌日は観光ドライブへ。 北へ向けての約1時間のドライブで、万里の長城に到着。想像を超える巨大な構築物で、 凹凸が激しいのに一驚しました。きびしい寒さの中を、女坂を1時間ほど、息を切らし て歩いてきました(写真は 谷教授と一緒に一息ついているところ)。長城の入り口から左に向かうと男坂、右に 向かうと女坂となり、女坂の方が坂道が緩やかなのだそうです。

 北京で最も楽しめたのはやはり中華料理。本場の中華料理は神戸の中華料理とぜんぜん味 が違っていて、おいしい。コショウ辛いことはたしかですが、これさえ気をつければ、 味は抜群で、最高でした。北京ダックのような肉料理のほかに、魚介類、野菜を使った 料理をたくさんいただきました。北京には、また行きます。

◆いよいよ大阪の中ノ島にサテライト教室◆

 MBAスクールは土曜日集中講義と平日夜間講義によって運営していますので、特に 平日夜間講義のためのサテライト教室を大阪のダウンタウンに捜していました。学生 の大半が大阪市内に職場をもっており、仕事を終えてから六甲台に通学するというの では、あまりにロスが大きいからです。一昨年は、スポットで貸し会議場をいくつか借用し、 昨年は通年にわたって大阪ガスの研修所をお借りして、何とか当座を凌いできたのが実情です。

 ところが、大阪府立の中ノ島図書館の付属ビルを社会人ビジネススクールに開放す るという話が持ち上がり、その2階ー4階の一部をサテライト教室として借り上げることが決ま りました。

 3月30日(火)には、多数のご来賓をお迎えして、華やかに開所式を行いました。やや 狭いものの、ビルの改修、備品も立派で、これなら第一級の教室といえます。祝賀パーティ でも、お客さまより、いろいろとご賞賛をいただきました。

 なお、この大阪サテライト教室は昼間、土日は空いていますので、ゼミ、ワークショップな どのミーティングに開放することになります。事務室に職員を配置しますし、コピー機、パソ コンなども備え付けています。

◆意味不明の独立行政法人化◆

 この4月から神戸大学も独立行政法人に組織変更し、わたしの身分も国家公務員から「ふつ うの教師」に変わったみたいですが、昨年末から(いやもっと前から)会議ばかり開いていた のに、いざとなってみると、わけのわからないことばかりで、この年度末は混乱の毎日となりま した。六甲台図書館は増築中なのに、備品や器具の予算枠はなく、経常費も30%カットされる始 末です。走り回って、ジャーナル類の継続購入の見通しだけは立ちましたが、単行本は1冊も買 えないおそれがあって、学生に申し訳ない思いでいっぱいです。ですが、いちおう任期が到来し ましたので、六甲台図書館の館長の仕事は、3月末をもって終了しました。いろいろとお世話に なりました。

◆コンピュータ・ウイルスが大暴れ◆

 コンピュータ・ウイルスが飛び回っているということはどなたもご存知ですし、わたしパソ コンにも、まいにちのように、ウイルスの付いた汚染ファイルが入ってきます。すぐに駆除し、 無力化しているから、パソコンが生き延びているだけのことです。

 メールなどにウイルスを添付している場合、その添付ファイルをクリックすると、ウイルス が動き出し、パソコンの中に住み着いてしまいます。パソコンに住み着いたウイルスはすぐに 活動を始めて、いろんなイタズラをします。そのイタズラの典型が、メールソフトの「アドレ ス帳」をさがし出して、その中から適当にアドレスを拾って、この拾ったアドレスに向けて メールを自動発信するというものです。こうして自動発信されるメールには、ウイルスが添付されてい ますので、ウイルスへの汚染が拡大することになります。

 今回大騒ぎになったのは、MBAの学生のだれかが、「アドレス帳」の中に、グループ送信用の ML(メーリング・アドレス)を登録していたことによります。この学生のパソコンにウイルスが 進入したために、MLが悪用され、多数の学生に対してウイルス付きの汚染ファイルがばら撒かれ る事態になりました。当の学生は気づいていないもようで、2-3日、ウイルス付きメールが激し く飛び交う状態がつづきました。

 ウイルスに対する対処については、いろいろな議論がなされています。しかし、完全にウイル スを封じ込む手立てはまだみつかっていないわけですので、自分で身を護るしは方法はありま せん。こまったことですが、これが現実です。

◆USにおける会計基準設定主体の変更◆

 アメリカでは、エンロン事件などの教訓を受けて、会計基準の制定方式を「細則主義」(rule-bases) から「原則主義」(principle-based)へと転換しようとしています。あまりに細かいルールを設定して きたために、抜け穴捜しを誘発し、会計ルールの根幹が揺らいだ、という反省によるものです。

 またこれとは別に、国際会計基準との協調を深めるために"International Convergence"を積極的に 推進しようという動きもあります。アメリカでは「一般に認められた会計原則」(GAAP)が最も基本的な会計 ルールですが、このGAAPを決めている機関としては次の4つがあります。

FASB: Financial Accounting Standards Board: 常設の会計基準設定主体で、最も基本的な第三 セクター。FASB Statement, Interpreation, Technical Bulletinを出す。

AcSEC: AICPA's Accounting Standards Executive Committee: アメリカ公認会計士協会の上級 機関で、特定業界の会計問題などを取り扱う。AcSEC Statements of Position and Industry Audit and Accounting Guidesが代表的な指針.

EITF: Emerging Issues Task Force: 緊急会計問題への対処とか会計実務の多様性への対応を取り 扱う。EITF Consensuses.

SEC Staff:証券取引委員会の部局であり、 Staff Accounting Bulletins, Accounting Series Releases, Financial Reporting Releasesなどを発刊する。

 国際会計基準との協調にあわっせて基準設定主体の見直しも行われており、AcSECも、FASBに取り込まれる ことになりそうだといわれています。USにおいても、会計基準設定主体に変更が行われており、会計ビッグ バンの激動は、当面終わりそうにありません。 (参考文献)Herz, Robert, "Commentary: A Year of Challege and Change for the FASB," Accounting Horizons, Vol.17, No.3 (September 2003), pp.247-255.

◆コミットメントラインによる融資◆

 コミットメントラインというのは、銀行が貸出先企業に対して、「最大融資枠」を設定し、この枠 の範囲内であれば、貸出先企業にいつでも融資するとする契約のことです。貸出先企業からすれば、 資金調達余力をもって資金管理にあたることができますし、銀行も融資枠そのものをサービスとして 販売し、手数料を稼ぐことができます。このため、最近では運転資金はコミットメントラインによる 会社が増えてきています。

◆劣後ローン(劣後債)によるマジック◆

 劣後ローン(劣後債)というのは負債証券による資金調達方法の一種ですが、返済の優先順位が普通の 負債よりも後に回る点で特殊な債務であり、貸し手からすればリスクが高いものです。貸出先が経営に 失敗し、破産法や会社更正法の適用を受けた場合には、一般債権に比べて返済順位が低いから、一般債 権を完済した後でなければ返済を受けることができないという特徴があります。銀行、証券会社、生命 保険会社など、金融会社の間における貸付けによく利用されています。

 劣後ローンは負債と株主資本の中間的な性格をもっており、金融機関の自己資本規制(BIS)などでは、 負債というより、株主資本として扱われています。このため、負債比率が上昇して、自己資本規制の要 件を満たせなくなった金融機関が、「自己資本充実策」の一環として、この劣後ローンによって資金を 調達することが少なくないのです。

 劣後ローンといっても、負債は負債ですので、負債が多すぎるという理由で、負債証券の劣後ローン を発行するのは矛盾しています。しかし、劣後ローンによるマジックは、あちこちで使われているよう です。

>

◆ゴルフ場の預託証券と減損会計◆

 ゴルフ場を開設する場合には会員を募りますが、入会する会員には、入会金と預託金の納付を求めます。 ゴルフ場からすると、預託金は一種の負債であり、10年の据置期間をすぎると、退会の申し出があった会 員に預託金を返済しなければならないことになります。この会員権には市場が成り立っており、会員権が 売買されています。この会員権相場が預託金より高い場合には、預託金の返還を求めるよりも会員権を売 却する方が有利ですから、ゴルフ場に返還請求がでることはないわけです。しかし、会員権相場が預託金 より低くなると、預託金の返還請求が出てくるから、ゴルフ場はその支払いをしなければならないことに なります。資金繰りに失敗し、この支払いに応じきれないと、ゴルフ場は倒産します。

 減損会計適用されると、価値の低い会員権は、すべて時価まで切り下げられます。過去10年の間に、会 員権を売り抜けている会社もありますが、多くの会社では、ほとんど価値のない会員権が金庫に眠ってお り、減損会計の適用を受けることになります。

◆次回の更新◆

 これからは花の季節です。うつりゆく春の日々をお楽しみください。次回の更新は5月を予定しています。 ご機嫌よう。さようなら。


2004.03.31

神戸大学財務会計ラボ

代表 岡部 孝好

Graduate School of Business Administration

okabe@kobe-u.ac.jp

okabe@kobebs.ne.jp