A Message from Webmaster

 to New Version(November 20, 2002)




2002年11月版へのメッセージ



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   1995年10月 ラボ開設のご挨拶  ウエブマスターのプロフィール(Profile Information) [in English]

   Webmasterからのメッセージのバックナンバー[Backnumber]


◆紅葉が舞い散る六甲台◆

  今年の夏の暑さは格別でしたが、初秋の1−2週間、こんどは寒気に見舞われ、オフィスでも、冷房から 暖房へと、一挙に切り換えるあわただしい秋となりました。気温が急降下した年の紅葉はやはり素晴らしいもので、 六甲台でも、イチョウ、サクラ、モミジ、ウルシ、ツタ、ドウダンツツジなどの紅葉を存分に楽しむことが できました。 いまは路上に散乱した落ち葉を踏んで、坂道を上り下りしています。ひにひに寒さがましてきている感じ ですので、もうすぐ木々も丸裸になって、六甲下ろしの北風を凌ぐことになります。

 神戸高商が設立されたのは1902年のことですから、ことしはちょうど100年目にあたります。 この100周年を祝って、5月には全学で大規模な祝賀会が開かれましたし、10月には六甲台でも、独自の 記念行事を開催し、お祝い気分を盛り上げました。

 そのうえ、経営学研究科では、本年の4月より、社会人MBAコースを改組して、専門大学院を スタートさせました。これもたいへんおめでたいことですので、経営学研究科として6月に記念行事を行 い、シンポやパーティで新出発を祝いました。

 イベントとパーティばかりで、やや疲れ気味なことはたしかですが、この2002 年は、記念すべき特別の歳であったといえそうです。その2002年も、残り少なくなってしまいましたが、 おかげさまで、元気で、六甲台キャンパスで初冬の日々を楽しんでおります。みなさん、ご機嫌いかが でしょうか。

◆初冬の大台ケ原を歩く◆

  11月の第2週末、近鉄南大阪線の大和上市から奈良交通バスを捕えて、大台ケ原へ。 鮎つりの名所、吉野川(紀ノ川の上流)沿いに、1時間45分もバスに揺られ、ようやく紀伊半島 の屋根、大台ケ原へ。 標高は約1,400M台。

 山麓は真っ赤な紅葉だったのに、山上はすでに初冬で、15センチの積雪。しかし、空は快晴 で、澄みきった空気。素晴らしい景色で、タバコがうまい。

 さっそくアイゼンを履いて、雪道を日出ケ岳(標高1,640M)へ。伊勢湾、大峰山の眺望を楽 しんだあと、正木ケ原をへて山荘へ。夜の気温はマイナス5度にも下がって、寒気はきびしい。凍結防止 のために水道の蛇口を開いて、就寝。山荘の一夜も、また快適。

 翌日も快晴に恵まれ、小鳥のさえずりを聞きながら、ガラガラ谷を下り、さらに大蛇クリの 絶壁へ。雪がとけはじめて歩行には難渋するが、まわりは聞きしにまさる絶景ばかり。久しぶりに楽しい 山歩きとなりました。この大台ケ原も、2週間後には閉山の予定といってましたので、ことしはこれで 終わりです。来年の春にはもう一度この山に登り、野生のシャクナゲをみたいと思う。

 大台ケ原が抱える悩みは、鹿のいたづら。この林に生息している大群の鹿が、地上1Mく らいのところで、トウヒの大木の樹皮を食べてしまう。そのために、養分の補給を絶たれたトウヒは立 ち枯れ[写真]、みどり豊であった一帯の山林は、哀れにも、枯れ木が林立する笹山に姿を変えてきて いる。自然の保護というのは、簡単なことではない。

◆歴史小説の2冊◆

 最近読んだ文庫本に、おもしろい歴史小説が2冊あったので、紹介しよう。まず1冊目は ノンフィクションで、タイトルは『チュウリップ・バブル』(M.ダッシュ著、明石三世訳、文藝春秋社)。 これは、1600年代に、オランダで実際に起きたチュウリップ投資のフィーバーを取り扱った歴史もので、 それがどのように人を狂わせたのかを克明に語り明かしている。このストーリーを読むと、なぜマネー ゲームの幻想に人が熱狂し、どのようにその幻想が潰れてしまうのかがわかるような気がしてくる。 「歴史は繰り返す」といわれるが、1990年代におきた日本の土地バブルも、アメリカのネット・バブルも、 チュウリップ・バブルの現代版でしかないといえよう。

  2冊目は『今ふたたびの海(上、下)』(ロバート・ゴタード、加地美知子訳、講談社文庫)。原題は "Sea Change"と意味不明だから、日本語の訳の方が優れものといえよう。これは、海にかんする推理小 説であるが、興味深いことに、「事件」の背景は1700年代にイギリスで(オランダ、フランスでも)発生 した南海泡沫事件(the South Sea Bubble)であり、史実に忠実に沿って、ダイナミックにストーリーが繰 り広げられる。しかも、事件の中核になるのは1冊の会計帳簿(グリーンブック)であり、この会計帳簿 が表に出ると、何もかも、バレてしまう。そこで、不正を隠蔽するために、この会計帳簿を海外に隠すこ とから、物語りがはじまる。事件解明のカナメになるのがこの1冊の会計帳簿であり、その取り合いがか ずかずの殺人事件に発展する。

◆地価税とテニス◆

 地価税とテニスは、本来なら、無関係。しかし、わたしにとっては、2つの関係はおおありな のです。

 地価税というのは、国内に保有されている土地に課される税金です。納税額は路線価格をベー スに、1平方メートル当たり3万円の基礎控除が認められていますので、地価が1平方メートル当たり 3万円以上であれば、課税は免れられません。税率は0.3%ですので、地価が1億円なら、年300万円の 納税額という計算になります。

 この地価税が課されるという条件のもとでは、年300円以上、月30 万円程度の収益を稼がないことには、1億円の土地は保有できないということになります。しかし、これ がなかなか困難なもようです。

 民営のテニスコートでは、1時間2,000程度の料金でコートを貸しています。しかし、テニス ブームが去った最近では、この料金によって、毎月30万円程度の収益を稼ぐのは至難です。そこで、民営 のテニスコートは閉鎖して、駐車場に、マンションに、建売住宅などに姿を変える例が増えることになり ます。地価税のために、テニスコートが1つひとつ消えてゆき、テニス愛好家はプレイする場所を失います。

 どのこの市町村にも、立派な公営のテニスコートが市民のために整備されています。しかし、 民営のテニスコートから締め出されたテニス愛好家が押し寄せてくると、公営のテニスコートはすぐに いっぱいになり、予約が取れなくなります。これが、地価税のもたらした結果です。

 わたしたちのテニスクラブでは、1993年ごろまでは、週1のテニスにおいて、箕面市の秋葉テ ニスコートのお世話になっていましたが、地価税が創設されて、このテニスコートはマンションになって しまいました。その後、箕面観光ホテル、池田市民テニスコートなどを転々したあげくに、1994年ごろ川 西市のメッサーシュミット・テニスコートに腰を据えました。春夏秋冬、テニスが楽しめたのは、この民 営コートがあったからです。

 ところが、本年11月には、このメッサーシュミット・テニスコートもまた閉鎖されるというこ となりました。跡地には、老人ホームが建設されるということです。ほぼ10年お世話になった思いで深い コートですが、地価税を払えないということであれば、仕方のないことです。

 それからというもの、テニスコート探しにやっきとなっていましたが、このほどようやく、新 しいテニスコートに落ち着きました。大阪府水道局が運営する「アクア・テニスコート」がそれです。場所 は箕面の新船場問屋街の近くで、千里中央駅から歩ける距離です。これから冬に向かいますが、この新コー トで、気分を一新して、がんばりたいと思っています。

◆新しい1株あたりの利益(EPS)の計算法◆

  EPSの計算法は、概念的にはいたって簡単です。株主利益―当期純利益―を株数(発行済み株数) で割れば、EPSが求められます。1株にいくらの純利益が普通株主に帰属するのかを表すのがEPS です。しかし、従来では、この簡単な計算法だけによっていたために、不正確な数値になる場合が ありました。まず第1に、自己株式が考慮されていませんでしたし、第2にワラントなどの潜在株 式の存在が無視されていました。新しい1株あたりの利益(EPS)の計算法は、従来の方式に含まれて いたこうした問題点を除去しようとするものです(制定2002.9.25、適用2004.4.1)。

 新方式によると、EPSの計算にあたっては、優先株が存在しない場合でも、分子にも分 母にも調整が必要となります。まず分子については、普通株主の取り分だけに金額を絞り込むため に、利益処分による役員賞与を控除しなければならないことになります。分母については、株数が 増減している可能性がありますので、普通株式の期中平均株数を求めるとともに、自己株式を考慮 して、期中平均自己株式数を控除します。

 次に、ワラント(新株予約権付社債)など、潜在株式が発行されている場合には、希薄 化効果を考慮する必要がありますので、権利行使仮定法によって、潜在株式調整後1株当たり利益を 計算します。この計算はややテクニカルになりますので、ここでは省略します。

◆新商法における法定準備金の取崩しは問題含み◆

  今回の商法改正の問題点は、株主へ配当する目的で法定準備金を取り崩すことを認めたことにあり ます(旧制度においては、欠損のてん補と資本組入れに使用する場合を除いて、資本準備金の取崩 しは禁止されていました)。法定準備金を取り崩して配当に当てることができるとしても、利益準 備金だけに限定されているのであれば、比較的問題は軽微といえます。利益準備金は、過年度に未 処分利益の中から積み立てた留保利益であり、この点では任意積立金と同じ性格のものです。留保 利益であれば、たとえ株主に配当されても、株主の払込資本を侵食することにはならないのです。

  しかし、取崩しが可能となった法定準備金には資本準備金が含まれますので、配当の原資に資本取 引による資本剰余金が充当される可能性がでてきました。配当の原資として資本準備金が使用され るとなると、配当は払込資本の返却と同じことになって、きわめて不健全なことになります。この ケースは、配当といっても、実際には株主から拠出された払込資本の払戻しであり、減資と同じに なりますので、「タコ配当」に似た結果が生じるおそれがあります。

  もちろん商法では、債権者保護の見地から配当限度額を定めていて、その中で法定準備金の維持を 強調しています。しかし、法定準備金は、その合計額が資本金の4分の1以上となるように維持す るだけでよく、それを超えるものについては、たとえ資本準備金であっても、(定時株主総会の普 通決議により)取り崩して、配当に充てることは許されることになったのです(商法289条2)。

  今回の商法改正では、自己株式の保有制限が撤廃されましたので、この自己株式の取得に横並びする とすれば、資本準備金からの配当はおそらくは軽微な問題でしかなく、商法上の配当規制について、 いまさらとやかくいうまでもないという見方もできます。しかし、会計処理においては、この資本準 備金の取崩しを、利益準備金の取崩しと同等に扱うのかどうかという問題は残ります。もし2つを区 別するとすれば、その取扱いをどう切り分けるかが重要になってくるのです。

◆次の更新◆

 次回の更新は冬休明けを予定しています。寒冷の季節となりますので、風邪などお召しにならないようご自愛いただき、ますますご活躍ください。ご機嫌よう。


2002.11.20

神戸大学財務会計ラボ

岡部 孝好

Graduate School of Business Administration

okabe@kobe-u.ac.jp

okabe@kobebs.ne.jp