A Message from Webmaster
to New Version(October 31, 2001)
2001年10月版へのメッセージ
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1995年10月 ラボ開設のご挨拶
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Webmasterからのメッセージのバックナンバー[Backnumber]
◆六甲台は紅葉の季節◆
◆アトランタからメンフィスへ◆
◆アメリカ会計学会2001年大会に参加◆ パソコンのウオーム、コードレッドの攻撃にさらされるなど、この財務会計ラボも多難な初秋をすごしてきましたが、おかげさまにて、なんとか復旧し、運転をつづけております。いつものご来訪ありがとうございます。
六甲台は紅葉の季節に入り、晴れがましい姿になってきています。春の花、夏の緑もすてきですが、秋の紅葉もこころを沸き立たせてくれます。
2001年の夏の盛り、8月7日に成田を発ってアトランタ(ジョージア州)へ。そして、メンフィス(テネシー州)へ。ニュヨークのテロ事件より、はるか前のことです。
12時間の、長い長い空の旅を終えてアトランタ空港に降り立つと、さすがにぎらぎらの太陽が輝いていて、ここはやはり南部の街と思い知りました。ホテルに入って、まずビール。
1996年のオリピックを機に、アトランタは南部の旧都市から超近代的な大都市に転換し、高層ビルの林立するビジネスの大拠点に生まれ変わっています。コカコーラ、デルタ航空の本社があり、人口400万人。MATAというスマートな地下鉄が運営されていますが、交通の主軸はクルマで、高速道における朝夕の交通量はすさまじい。空の交通はデルタ航空が独占状況で、アトランタ国際空港の客は、そのほとんどがデルタのカウンターの前に並んでいます。
一方、メンフィスはミシシッピー川沿にあって、人口140万人。かつてコットン取引の中心地として繁栄していたといわれていますが、いまは、世界最大の総合航空貨物輸送企業のFedExが本社構えていることで知られており、地球規模の輸送ビジネスの基地となっています。FedExは、従業員が148,000人で、662機の自社航空機、45,000台の自社配送車を用いて、1日330万個もの貨物を世界211カ国へ配送しているという。24ー48時間以内のドア・ツー・ドア高速配送、輸送遅延に対するマネーバック・ギャランティ制度など、最高品質の運輸サービスで圧倒的な競争優位に立っています。FedExではまた、フェデックス・インターネットショップも展開し、eコマースでも大いに注目されています。
メンフィスのミシシッピー川では濁流が渦巻いていて、河岸の林が素晴らしい。夏の一日、遊覧船でこの巨大な川を遡航し、河岸の風景を楽めたのは、この夏の最大の収穫といえそう。メンフィスはエルビス・プレスリーの故郷で、ブルースの街でもある。アメリカは活力のある豊かな国であるが、文化、芸術も花咲いている。
アトランタで開催されたアメリカ会計学会(AAA)の2001年大会に久しぶりに出席して、最新の研究討論に参加する機会をえた。日本からは若杉明教授(高千穂経済大)、加藤盛弘教授(同志社大)、辻山栄子教授(武蔵大)、田中隆雄教授(東北大)、井上達夫教授(関西学院大)など。
例によって、同時セッションが多数開かれていて、参加できたセッションは限られるが、私の関心を呼んだトピックスは、V/P、post-announcement drift、earnings management、debt covenant、e-commerceなど。どれも目新しいテーマではないが、実証モデルはすごく精密になっていて、話が実にこまかい。検証のパワーも大幅に改善されていて、実証会計学の経験的研究もますます説得力が強くなってきている。
研究報告の大部分は依然として効率的市場仮説かエージェンシー理論によるわけだから、理論的バックボーンに大きな変化はないといえる。しかし、各論がすみずみに広がっていて、研究の深まりを感じています。
◆ギガビットLANの展開◆
◆来春、神戸大学経営学研究科に専門大学院を新設◆ いよいよブロードバンドの時代に突入しようとしていますが、神戸大学ではこの2001年8月に全学にギガビットLANを敷設し、1000MB/Sの高速通信環境を整えました。ここ六甲台キャンパスでも、100MBのハイスピードで、インターネットが動いています。
インターネットの高速化にともない、コンテンツの主役は文字、静止画像から音声、動画に変わろうとしています。音楽、映画などがインターネット上を自由に行き来する素晴らしい時代になってきたのです。
神戸大学経営学部では、昨年より動画コンテンツの試作をはじめていますが、これをさらに拡充して、新時代の経営学教育システムにグレードアップしようとしています。また、すでに運用中のビデオ・オンデマンド(VOD)をいっそう機能強化し、動画コンテンツの配信システムを確立する計画も進行しています。神戸ハーバランドと大阪梅田のサテライト・キャンパスをインターネットで結んで、このインフラのうえに、神戸ビジネススクールのMBA教育を展開するのです。学内におけるギガビットLANの展開によって、この夢の構想がようやく現実のものになってきました。
神戸大学経営学研究科には、現在、マネジメント・システム専攻、会計システム専攻、市場科学専攻、現代経営学専攻の4専攻がありますが、来春の2002年4月より、現代経営学専攻を分離独立させ、専門大学院を開設する予定で、準備がすすめられています。
この専門大学院は高度の専門職業人を育成するもので、社会人MBAのコースが主軸になります。全体の定員は80人から105人に増えますが、社会人MBAコースの枠は、現在とほぼ同様の規模になる見通しです。
◆商法計算規定の抜本改正案◆
◆岡部ゼミ4回生の夏合宿は神鍋高原で◆ ◆2001年のノーベル経済学賞◆ ◆次回の更新◆
2002年4月の通常国会で改正を予定されている商法改正案には、計算規定の抜本改正が含まれています。明治32年の商法以来、きわめて重要な役割を果たしてきた会計規定が、ほとんどすべて商法の本則から削除され、法務省令の計算書類規則に移される見通しです。
この商法改正案には連結財務諸表の採用も予定されていますが、それは証券取引法(および財務諸表規則)を準用する形になるもようです。
この商法改正案が採択されるとすると、次のような大転換がおきると考えられます。
(1) いわゆるトライアングル体制が崩壊し、商法ベースと証券取引法ベースが融合する。
(2) 税法の確定決算主義が基礎を失って、税務会計が独立性を高める。
(3) 中小規模の会社における会計制度が激変する。
(4) 会計ルールの設定主体、設定プロセスなどが、ますます日本独自の色彩を濃くして、官僚の影響が強くなる。
岡部ゼミ4回生は、9月25日(火)、9月26日(水)に1泊2日の夏合宿を行いました。場所は兵庫県北部の神鍋高原で、緑の山並みと澄んだ空気が待っていてくれました。
テニスに温泉を存分に楽しみ、そして狂牛病のことも忘れて、おなかいっぱいバーベキュウをいただきました。幹事の木嶋君、出水君、ご苦労さんでした。
本年のノーベル経済学賞の受賞者には、ジョージ・アカロフ、マイケル・スペンス、ジョゼフ・スティグリッツの3教授が選ばれました。とてもうれしいニュースです。
わたしは1981年カナダのブリティシュコロンビア大学に留学していましたが、その時、ゲラルド・フェルサム教授のクラスで、新しいミクロ経済学の旗手として、この3氏の名前を聞きました。当時では、3氏ともに、30歳そこそこの若い研究者であったはずです。さっそく図書館に論文のコピーに走り、大いに感動したのを思い出します。
アカロフの有名な「レモンの原理」は品質情報の非対称性を分析したものですが、会計情報への含意が深いことから、わたしの著書でも再々引用させていただいています。労働市場におけるシグナリング・モデルはスペンスが開発した画期的な経済分析手法ですが、これによって明らかになった「自己選抜」も、わたしの理論体系の重要な一部になっています。スティグリッツの研究領域は多岐にわたりますが、わたしが最も強い影響を受けたのは「私有財産」の理論です。「所有すること」がインセティブに、そして経済システムの運行にどれほどインパクトを与えるのかを考えはじめたのは、スティグリッツの論文を読んでからのことです。
過去20年間、会計理論は、ミクロ経済理論を吸収し、様変わりの変貌を遂げましたが、その駆動力となったのはジョージ・アカロフ、マイケル・スペンス、ジョゼフ・スティグリッツです。この3教授にノーベル経済学賞が輝きました。
次回の更新は冬休みを予定しています。寒冷の季節を迎えますが、お元気にてますますご活躍ください。ごきげんよう。
2001.10.31
神戸大学財務会計ラボ
岡部 孝好
Graduate School of Business Administration
okabe@kobe-u.ac.jp
okabe@kobebs.ne.jp