◆賀春◆
あけまして、おめでとうございます。

いつものアクセス、ありがとうございます。お蔭さまにて、元気に、
家族ともども、2006年のお正月を祝っております。
このサイトもついに10歳を越えました。立ち上がりは震災の1995年でしたが、当時にに比べると、イ
ンターネットの世界は様変わりになってしまいました。ビジネスはもとより、教育、研究におけるインター
ネットの利用はこれからも革新しつつけると思われますので、本年も頑張って、コンピュータと仲良く生活
してみたいと考えております。パソコンもデジカメも新調しました。
こんごともよろしく、お願い申し上げます。
2006年元旦
OBENET.JP 岡部孝好
◆e-BOOK◆
電子書籍というのは、ブック・サイズの超薄型コンピュータ
によって、読書をする本のことを
いいます。巨大なメモリーを内蔵していますから、書架5-6本分の書籍をいつも持ち運んでいる
ことになるらしい。文字の拡大(と縮小)が自由にできるから、e-BOOKは年寄りに向いているの
かもしれない。検索とか、辞書の参照は、もちろんのことです。(写真は、
昨年末の大寒波のころ、近くの箕面川に飛来した鴨の仲良し4人組。)

ソニーでは、e-Bookリーダー「リブリエ」を昨年に発売しは
じめましたが、その電子出版の規
格は「BBeB(Broad Band e-Book)規格」だとされています。これはホームページ用の言語XML
(HTMLの拡張版)をベースにしたものといわれており、この電子出版用コンテンツの編集言語
によって本を「出版」しているということです。この出版物を読む小道具が、手のひらサイズの「リ
ブリエ」なのです。売れてるのかどうかは、よく知りません。

アメリカでは、e-Bookリーダーはかなり普及していて、ふつうのパソコンの画面において
本を読むソフトが広く出回っています。わたしが見た中で、すぐれものは
Flip Viewer(e-BOOK System)です。
これは閲覧ソフトで、通常のパソコン用のe-Bookリーダーですから、電車の中では使えない。
電子書籍の供給サイドは、やはり出版社で、e-Publisherというらしい。この供給サイドにおいて、
原稿から書籍が制作されますが、その際にソフトが必要になります。この電子出版のためのソフト
が「電子書籍のコンパイラー」であり、
fast ebook、
desktop authorなどが知られています。
これらのコンパイラーは、doc, pdf, などの文書ファイルからe-BOOKを制作するだけのものであり、
あまり大掛かりな仕掛けではなさそうです。値段も高いものではないから、わたしでも買えそうです。

e-BOOKといっても、原稿はだれかが書かなければならないから、原稿執筆の苦しみが減るわけではない。
読者が活字を一字一字読むという苦労にも、さして変わりはない。しかし、完成した原稿であれ
ば、パソコン上でそのままe-BOOKに変換できるし、e-BOOKなら、ホームページから簡単に読者の
手に届けられることになる。材木からできた重い紙に印刷したり、かさばる本を持ち運んだりする
苦労はたしかになくなるかもしれない。しかし、著者は原稿料も欲しいわけだから、ビジネス・
モデルはもっと慎重に考えないわけにはいかない。いま考えているのは、そのことです。
なお、日本における電子書籍の現況については、老舗の「電子書店パピレス」を参照されたい。
◆e-Tax◆
税金は毎年3月15日に税務署に出向いて、確定申告の書類を提出することになっています。この時期
は税務署は大変な混雑ですので、申告は半日がかりの大仕事になってしまう。その前に書類を作成し
ておかなければならないから、電卓を片手に、何度も計算をやり直すことになる。大学の先生は他の
大学の非常勤講師を兼任している例が多いから、給与所得が2口以上になって、確定申告の義務が免
除にならない。安い非常勤手当をもらったために、確定申告が義務になるし、確定申告をすれば、か
なりの額の税金を追徴されることになる。非常勤講師はまったく採算にあわないが、知り合いから泣
きつかれると、断れない。

国税庁は最近になって、インターネットによる確定申告を運用しはじめた。「
国税電子申告・納税システム(e-Tax)」というのがそれです。さっそくこのe-Taxによりたいと
ころであるが、今年は退職金などややこしい項目があるから、やはり紙ベースによるほかはないか
もしれない。大学で税務会計を教えていても、退職金の税務計算となると、まったくのお手上げになって
しまう。
なお、国税庁は税務会計の基本ルールもインターネットに乗せており、例の「
国税庁法人税基本通達」
なども、いまではブラウザーから検索できます。課税システムも、インターネットによって運用され
る時代に変わったにかもしれない。
◆会計のルール・メーカー◆
会計原則、会計基準、会計規則などの会計ルールというのは、企業が行う会計行為を縛るもので
あり、会計規制(accounting regulation)といわれています。この会計規制は、規制主体によって会
計ルールが作成され、そして企業を規制対象として、その会計ルールが施行されることになります。
規制主体というは、会計ルール・メーカーのことです。
1970年代から、この規制主体を民営化するのが世界的傾向になり、会計ルールを制定する仕事は政府か
ら第三セクターなどに引き渡されるのが常識になってきています。いまでもアメリカではFASBが、
イギリスではAPBなどが会計ルール制定のイニシアティブをとっており、民間主導で会計ルールの
制定がすすめられています。わが国でも、会計基準委員会が設立され、この委員会の手によって、
新しい会計基準が制定されているのが現状です。

ところで、今回の新会社法においては、旧商法にあった会社の会計規定がほとんど外されていて、
環境の変化におうじて柔軟に会計ルールの改廃ができる仕組みが導入されています。会計ビッグバン以来、
これだけ激しく会計ルールが変更されてきたのですから、こうして会計ルールの固定化を避けるのは、
基本姿勢として勝れたものだろうと思われます。国際的コンバージェンスにおいても、この柔軟なスタン
スが大いに威力を発揮することはまちがいないことです。
しかし、新会社法では、会計ルールの制定をすべて法務省令に丸投げしています。法務省令というの
は法務省の省令であり、官僚が作成する命令です。新しい会計ルールも、そのルール・メーカーは「国」
であり、民間ではないのです。これでは、世界の潮流に逆行していることになります。
有価証券報告書も内閣府令(第109号)によっているのだから、新会社法の会計ルールは法務省令によって
当然という見方もできるのかもしれません。しかし、国の機関が会計ルールを定め、その遵守をすべての会社に強制
するというのは、どうもしっくりしない筋書きです。この大問題が、わが国では、ほとんど議論され
ていないのは、どういうことでしょうか。

◆プロフォーマ利益◆
アメリカでは、プロフォーマ利益(pro forma earnings)という利益数値が公開されていますが、これは
会計規制によって開示を要求されていない任意開示の会計数値です。プロフォーマ利益とは、一般に認
められた会計原則(GAAP)にしたがって損益計算書に公式に表示される純利益に対して何らかの修正を加
えたものであり、ある種の費用項目が除外されているのが特徴です。プロフォーマ利益の代表をなすの
は業務利益(EBIT: earnings before interest and
tax)ですが、このEBITの計算では、支払利息と税金が費用から除外されています。
プロフォーマ利益は多数ありますが、EBITDA
(earnings before interest, tax, depreciation and amortization)では、
支払利息と税金のほかに、さらに減価償却費(depreciation)と減耗消却費(amortization)とが除外され
ています。和訳すると、EBITDAは「利子、税金、減価償却費、減耗消却費を控除する前の利益」となり、
その意味はいたって不明確です。しかし、減価償却費と減耗償却費というのは現金にかかわりのない費
用項目ですので、これらを足し戻すと、残りの利益数値は「現金利益」(cash income)というニュアンス
をもつことになります。キャッシュフロー情報が公開される前には、この点で重宝されていました。
EBDDT(earnings before depreciation and defered tax)というのもプロフォーマ利益ですが、この
EBDDTでは、減価償却費と
繰延税金資産の償却費が利益から除かれています。これも現金利益という点を強調するものですが、
繰延税金資産というのは
当てにならない会計数値だから、それを考慮の外において、業績を評価した方がよいという判断も含
まれています。

アメリカの会計報告書の冒頭には、MD&A(Management Discussion and Analysis)というセクションが
あります。このMD&Aにお
いて経営者が投資者を説得する際に利用される会計数値が、プロフォーマ利益です。損益計算書の利
益数値はあまりよくないが、支払利息と税金を加算したEBITではわるくない、といった使い方がなさ
れています。1990年代になって特に広く使われるようになっ
たのはEBITDAですが、これも、減価償却費と減耗償却費を除外すると、当社の業績は競争会社よりけ
っして見劣りしないと、投資者とアナリストを説得する材料にされてきました。1990代にはM&Aがおお
はやりでしたから、暖簾の償却費の負担が重く、それを除外すると、利益数値の見栄えは大幅に改善
されるという事情があったのです。減耗消却費(amortization)というのは、当時では、その大部分が暖簾の
償却費によって占められていたといわれています。
プロフォーマ利益は投資者とアナリストを説得するための会計数値ですが、実際のビジネスでもかなり
重要な働きをしていて、
たとえば銀行の貸付担当者も、EBITDAが既存の借入金の3倍以上ないと、新規の融資には応じないとされ
ています。中でもEBIT
の利用は深く浸透しており、たとえば社債の財務制限条項には、EBITと支払利息の比率を表す利子カバ
レッジ比率(interest
coverage ratio)が必ず書き込まれています。任意公開の利益数値でも、プロフォーマ利益は実際には
広く利用されているの
です。
プロフォーマ利益で除外されるのは費用項目だけであり、収益項目が除外された例はありません。
このため、見栄えのよい利益数値を公表したがっているという経営者の動機が疑われています。また、
費用項目を除外する規準が明らかではありませんので、ご都合主義によって、公表利益が裁量的に歪め
られているという批判もあります。

◆簿記検定試験のこと◆
日本商工会議所の簿記検定試験は毎年3回実施されていますが、2006年の日程は次のようになっています。
平成18年2月26日(日)
平成18年6月11日(日)
平成18年11月19日(日)
平成19年2月25日(日)
新会社法の成立、新会計基準の制定などを受けて、出題範囲も少し変更されており、かなりの勘定科目が
入れ替わっています。簿記の基本的な構造は5世紀ほどもの間変わっていないわけですが、時流の変化に
ともなって、やはり微調整が欠かせないのです。この出題範囲の変更点についは
日本商工会議所のサイト
から情報が提供されています。
なお、簿記検定試験を受ける際に注意を要するのは、その申込みの場所と期間です。申込みの場所は
地元の商工会議所になっていて、受付期間もごく短い間です。各地の商工会議所において、試験日の
1月半ほど前に、2-3日だけ受け付けていますので、その間に手続きを済ます必要があります。この
点についても日本商工会議所のサイトに
詳しい情報があります。
◆害鳥と害獣◆
わが家の上空には多数のカラスが舞っていて、ゴミを門に出すと、急降下してきて、あっという間
に食い荒らしてしまいます。家庭菜園を楽しんでいる人に聞くと、ネットを張っていても、スイカ
はカラスに狙われていて、とても人間の口にははいらないらしい。

山里では、イノシシが出没して、電線を張っていても、稲を食い荒らすというし、山林では異常
に繁殖した鹿の群れが回遊し、杉の芽、檜の皮を食ってしまうらしい。CO2対策には植林が有効
といわれているが、若い杉や檜は鹿のごちそうだから、いまどきそんな木を植えても、鹿を育てる
だけだという。
都市の近くでも山奥でも、害鳥と害獣が暴れまわっているのに、人間は規制されていて、それに
対抗することができないのが実情です。銃砲刀剣が規制されているのはある程度やむをえないこ
とであろうが、狩猟そのものが規制されていて、免許なしに害鳥や害獣をやっつけると、「密猟」
として処罰されてしまう。動物の肉を処理すると、食品衛生なんとか法の違反になるらしい。
人間は規制されているのに、カラス、イノシシ、鹿などは、まったく規制されていないのです。
これでは、あまりにも不公平です。害鳥と害獣を規制できないのであれば、人間の規制を外すべきで
はないでしょうか。
◆ビジネス用語解説◆
【書合手形(かきあいてがた)】
年末の風物詩の1つは、お金のやり繰り。商人は支払いを終えないことには、歳が越せない。
お金のない2人の商人が自分の情けない身上を嘆きながら、何かいい工面はないかと知恵を
絞りあう。その時にひらめくのがこの書合手形。2人がそれぞれ相手を名宛
人として、同額の手形を振り出し、交換する。そして、その手形を街の金融業者に持ち込ん
で、割り引き、現金化する。これがうまくいくと、無から有が生じて、2人に現金が湧く。
書合手形の背景には商品の売買があるわけではないから、この手形はまぎれもない融通手形
(金融手形ともいう)である。お金のない2人が、互いに同額の負債を負って、助け合うの
だから、美談なのかもしれない。しかし、この書合手形は最もリスクが高く、不渡りになる
可能性が大きい。
【書き入れ時(かきいれどき)】
商売が繁盛して、お客さんが店頭に群がっている状況を指して「書き入れ時」という。商売が
ビジーなことをなぜ「書き入れ時」というかというと、売れると、売上げを会計帳簿に記入す
るのが忙しくなるからである。
書き入れ時ということばが、どれほど古くから使われていたのかは不明である。しかし、明治
維新よりも前から使われていたとすれば、江戸時代には売上げを記録する会計帳簿がちゃんと
存在していたことになる。

江戸時代になぜ売上げの会計帳簿が存在していたのかは、想像できないことではない。当時で
は現金取引はきわめてまれなことで、代金の決済は盆暮れの2回だけであった。だから、商品
を販売したときには、大福帳に必ず売掛金を記録しておく必要があった。分暮れには大福帳の
売掛金記録を指で示しながら、客に支払いを迫らないと、ツケをロハにされるおそれがあった
のである。
なお、広辞苑によると、ツケというのは付帳(つけちょう)のことで、買掛けを意味すること
ばらしいし、ロハというのは、只(ただ)という漢字を上下に分解し、カタカナで読んだこと
による。タダというのはあまりにも露骨で、気が引けたのであろう。
【縄のれんの勘定】
いっぱい飲み屋の客が、茶碗の冷酒をぐっと飲み干して、「大将、ごっそうさん」とそのまま
縄のれんを押し分けて、帰っていく風景は、江戸では下町のものであったろう。大阪でも、あ
ちこちにいっぱい飲み屋があったと聞く。
冷酒をあおって出て行った客は支払いをしていない。しかし、店を出るときに、縄のれんの1
本に結び瘤を1つだけ増やして帰る慣行があったという。縄のれんのどれかの1本がその顧客
に割り当てられていて、その結び瘤の数によって、売掛金が「記録」されていたらしい。ツケ
で飲むと結び瘤が増え、ツケを払うと、払っただけ結び瘤が解かれる。これは、いっぱい飲み
屋では、縄のれんの1本1本が得意先元帳の人名勘定になっていて、その記帳が顧客によって
行われていたことを意味する。
◆次回の更新◆
これからが、冬本番。ことしはきびしい寒さとなりそうです。風邪には十分ご注意のうえ、
冬の日々を存分にお楽しみください。次回の更新は3月を予定しています。ごきげんよう、
さようなら。