新 聞 発 表

平成11年1月22日
大    蔵    省

 

企業会計審議会総会の開催について

 

 企業会計審議会(会長 若杉 明 高千穂商科大学教授)は、平成8年7月から金融商品に係る会計基準について審議を行ってきましたが、本日、総会を開催し、「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」を取りまとめ、公表することとしました。

 

問い合わせ・連絡先
 大蔵省(TEL 3581−4111)
 金融企画局 市場課
   多賀谷(内線 6185)


金融商品に係る会計基準の概要

 

1.金融商品の範囲等

(1)

 金融取引の高度化・複雑化に対応し、現金預金、金銭債権債務、有価証券といった従来の金融商品の他、デリバティブ及びデリバティブを組み込んだ複合商品に関する会計処理を定めることとした。


(2)


 金融商品は色々な形態の取引市場において時価が形成されることから、取引所における価格に限らず、随時決済・換金ができる取引システムも含め時価を捉えることとした。


(注)


 随時決済・換金ができる取引システムとしては、インターバンク市場、ディーラー間市場、電子売買取引等が考えられる。

 

2.金融商品の発生及び消滅の認識

(1)

 現在、デリバティブは決済まで損益が認識されず、含み損益が顕在化しないという問題がある。そこで、約定時点から価格変動によるリスクとリターンが移転する金融商品については、決済時ではなく約定時に発生を認識する(帳簿に計上する)こととした。


(2)


 債権の譲渡に関する会計処理において、債権の部分譲渡、買戻義務を留保した譲渡及びSPCを利用した流動化等、金融資産の流動化手法の多様化に対応する会計基準がない。従って、譲渡された金融資産が第三者から法的に保全されていること、譲受人が通常の方法で利益を享受できること、金融資産を担保とした貸借取引でないことを要件として、債権をその構成要素(優先、劣後、買戻義務、回収リスク等)ごとに分解してオフバランス処理する基準(財務構成要素アプローチ)を定めることとした。

 

3.金融商品の評価基準

 金融商品は価格変動リスクを認識することが投資情報としても経営情報としても極めて重要であることから、客観的な時価が把握でき、当該価額により換金・決済できる金融商品は時価評価し、原則として、当期の損益に反映させることとした。ただし、直ちに売却を予定しない有価証券(その他有価証券)については、時価評価差額を損益に計上せず資本の部に表示する等、保有目的に応じた処理を採用している。

金融商品の属性

評価基準

評価差額の取扱い

売買目的

時 価

損益に計上

満期保有債券

償却原価

 

関係会社株式

原 価

 

その他有価証券

時 価

資本の部に直接計上

金銭債権

償却原価

 

特定金銭信託等

時 価

損益に計上

デリバティブ

時 価

損益に計上


(注1)

 償却原価とは、債券(債権)を債権額より高く又は安く取得した場合、当該差額を毎期利息として計上し、取得原価に加減した価額をいう。

(注2)

 「その他有価証券」の時価評価においては、期末時点の時価の他、期末前1カ月の平均時価によることもできる。

(注3)

 市場価格が著しく下落したときには、回復すると認められる場合を除き、帳簿価額を時価に付け替え損失を計上する強制評価減の考え方は、常時、すべての有価証券に適用する。

(注4)

 市場価格がなく時価評価できない場合は原価評価する。

 

4.貸倒見積高の算定

 現在、貸倒引当金の引き当ての算定方法についての一般的基準がないことから、法的な破綻に至るまで十分な引き当てが行われていないという問題がある。そこで、債権を債務者の状況に応じ3区分し、貸倒見積高の算定方法を定めることとした。

@

 一般債権 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権


A


 貸倒懸念債権


経営破綻には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権


B


 破産更生債権


経営破綻又は実質経営破綻の債務者に対する債権

意見書の基準

(参考)銀行監査実務指針

区 分

見積方法

区 分

見積方法

一般債権

貸倒実績率等(注)

正常先債権

貸倒実績率等(注)

要注意先債権

貸倒懸念債権

・担保のない部分の必要額

・割引現在価値

破綻懸念先

担保のない部分の必要額

破産更生債権

担保のない部分の全額

実質破綻先

担保のない部分の全額

破綻先

(注)債務者及び債権の状況に応じた貸倒実績率を用いる。

 

 なお、契約上の利息支払日を相当期間経過しても利息の支払がないにもかかわらず、安易に未収利息を計上し続けることには問題があることから、相当期間利息の支払がない場合や経営者が実質破綻の状態にある場合には、すでに計上している未収利息を取り消すとともにそれ以後の期間に係る未収利息は計上してはならないこととした。

 

5.ヘッジ会計

 外貨建債権債務に係る為替相場の変動、社債や借入金に係る金利変動といった相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブをヘッジ手段として用いることがある。デリバティブについては毎期末に時価評価する一方、ヘッジ対象の資産・負債が原価評価される場合には、デリバティブの損益が先に認識されることから、ヘッジ会計の手法を用いる必要が生じる。
 すなわち、相場変動との関係性やヘッジの有効性等一定の要件を満たすことを条件として、デリバティブの損益を損益に反映させず、ヘッジ対象の資産・負債の決済時点まで貸借対照表に計上して繰り延べ、両者の損益を対応させる処理を行うこととした。

(注)

 ヘッジ対象の資産・負債が時価評価できる場合には、デリバティブの損益を繰延べず、両者の損益を同時に計上することもできる。

 

6.複合金融商品(複数の金融商品を組み合わせた商品)

(1)

 新株引受権付社債を発行した場合には、従来どおり新株引受権の価値と社債の価値を区分して処理する。また、転換社債は、転換権と社債が一体となっていることを踏まえこれらを区分しないで処理する方法、又は、新株引受権付社債に準じて処理する方法のいずれでもよいこととした。


(注)


 区分処理では、例えば、100で発行した新株引受権付社債を、社債80、新株引受権20というように区分する。券面額100と社債の価値80との差額は毎期償却し、新株引受権20は行使されれば資本準備金に行使されなければ利益に計上する。


(2)


 金利オプションを組み込んだ借入金のように金利の支払がネットされるものは原則として一つの金融商品として処理する。ただし、デリバティブの価値が元本の返済額を増減させるようなもの(借入元本に係る通貨オプションを組み入れた円建ローン等)は元本とデリバティブを区分し、元本は原価評価・デリバティブは時価評価することとした。

 

実施時期等

(1)

 平成12年4月1日以後開始する事業年度から適用する。ただし、「その他有価証券」の時価評価は、平成13年4月1日以後開始する事業年度から適用する(平成12年4月1日以後開始する事業年度から同時に適用することも妨げない)。


(2)


 債権の流動化に関するオフバランス基準や貸倒見積高の算定基準は早期適用も可


(3)


 債権・債務のオフバランス処理に関しては、限定的に現行実務を認める経過措置を設けることとする。


(注)


 公認会計士協会は、上記会計基準の適用開始までに、より詳細な実務指針を作成することを予定している。

[続きがあります]