外貨建取引等会計処理基準   平成七年五月二十六日   企業会計審議会

一 外貨建取引

1 外貨建取引の処理

(1) 外貨建取引の円換算

 外貨建取引は、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録する。(注1)(注2)

(2) 為替予約等の付されている外貨建取引の円換算

@ 個別予約等

 取引発生時以前に本邦通貨による為替予約等が締結され、当該為替予約が付されたことによりその取引に係る外貨建金銭債権債務の決済時における円貨額が確定している外貨建取引については、当該円貨額をもって記録する。(注3)(注4)(注5)(注6)(注7)

A 包括予約等

 取引発生時以前に締結されている為替予約等を外貨建取引に振り当てることにより、その取引に係る外貨建金銭債権債務の決済時における円貨額を確定した外貨建取引については、当該円貨額をもって記録する。(注3)(注4)(注5) (注6)(注7)(注8)

2 決算時の処理 

(1) 換算方法

 外国通貨、外貨建金銭債権債務及び外貨建有価証券については、決済時において次の処理を行う。(注9)

@ 外国通貨

 外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額を付する。

A 外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。以下同じ。)

イ 外貨建短期金銭債権債務

 外貨建短期金銭債権債務については、決算時の為替相場による円換算額を付する。ただし、外貨建自社発行社債のうち転換請求期間満了前の転換社債(転換請求の可能性がないと認められるものを除く。)については、発行時の為替相場による円換算額を付する。(注10)

ロ 外貨建長期金銭債権債務

 外貨建長期金銭債権債務については、取得時又は発生時の為替相場による円換算額を付する。ただし、外貨建長期金銭債権債務(為替予約等が付されていることにより決済時における円貨額が確定しているもの及び外貨建自社発行転換社債を除く。)について、重要な為替差損が生じている場合には、当該外貨建長期金銭債権債務について決算時の為替相場による円換算額を付する。この場合、当該外貨建長期金銭債権又は債務に対応して、同一の通貨建ての外貨建長期金銭債務又は債権等を有することにより、為替差損が減殺されているものについては、当該減殺額を考慮する。(注10)(注11)

ハ 為替予約又は通貨先物の付されている外貨建金銭債権債務

 本邦通貨による個別予約等が付されていること又は包括予約等が振り当てられていることにより、決済時における円貨額が確定している外貨建金銭債権債務については、当該円貨額を付する。(注5)(注6)(注8)

ニ 通貨スワップの付されている外貨建金銭債権債務

 外貨建金銭債権債務について、通貨スワップ契約により当該契約期間満了日に支払うべき円貨額又は受取るべき円貨額が、当該外貨建金銭債権債務の支払日又は受取日を期日とする為替予約による円貨額と同等と認められる場合には、当該外貨建金銭債権債務についは当該通貨スワップ契約による円貨額を付し、同等と認められない場合には、当該外貨建金銭債権債務については、当該支払日又は受取日を期日とする先物為替相場により換算した円貨額を付する。ただし、通貨スワップ契約時における支払円貨額又は受取円貨額と通貨スワップ契約満了時における受取円貨額又は支払円貨額が同額の場合には、当該外貨建金銭債権債務に当該円貨額を付することができる。(注7)

ホ 通貨オプションの付されている外貨建金銭債権債務

 外貨建短期金銭債権債務に付された買建てのオプションについて、権利行使価格が決算時の為替相場より著しく有利な状態にあり、権利行使が確実に見込まれる場合には、権利行使が行われたものとして為替予約と同様の処理を行う。

B 外貨建有価証券

イ 決算日の翌日から起算して一年を超えて償還される外貨建保有社債その他の債券については、取得時の為替相場による円換算額を付する。

 ただし、重要な為替差損が生じている場合には、当該外貨建債券(為替予約等が付されていることにより決済時における円貨額が確定しているもの及び転換社債を除く。)について決算時の為替相場による円換算額を付する。この場合、同一通貨建ての外貨建長期金銭債務を有することにより、為替差損が減殺されているものについては、当該減殺額を考慮する。(注6)(注7)(注11)

ロ 決算日の翌日から起算して一年以内に償還される外貨建保有社債その他の債券については、決算時の為替相場による円換算額を付する。ただし、転換請求期間満了前の転換社債(転換請求の可能性がないと認められるものを除く。)については、取得時の為替相場による円換算額を付する(注6)(注7)

ハ 外貨建保有株式については、取得時の為替相場による円換算額を付する。

ニ 外貨建有価証券について低価基準を適用する場合には、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額と、本邦通貨による簿価のうちいずれか低い価額を付する。

 また、時価の著しい下落により評価額の引下げが求められる場合の時価は、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額により、実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合の実質価額は、外国通貨による実質価額を取得時の為替相場により円換算した額による。

(2) 換算差額の処理

 決算時における換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。

3 決済に伴う損益の処理

 外貨建金銭債権債務の決済(外国通貨の円換算を含む。)に伴って生じた損益は、当期の為替差損益として処理する。

4 財務諸表の注記

 外貨建長期金銭債権債務その他これに準ずる項目(ただし、決済時の為替相場による円換算額が付されている場合の除く。)については、決算時の為替相場による円換算額を貸借対照表に注記する。

ニ 在外支店の財務諸表項目

 本支店合併財務諸表を作成するにあたり、外国にある支店の外国通貨で表示されている財務諸表項目の換算は、次の方法による。

1 通貨及び金銭債権債務

 通貨及び金銭債権債務に付いては、本店と同様の方法による円換算額を付する。

2 有価証券

 有価証券については、本店と同様の方法による円換算額を付する。

 なお、低価基準を適用する場合には、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額と、外国通貨による取得価額を取得時の為替相場により円換算した額(前事業年度以前に評価減を行った場合には当該円換算額)のうちいずれか低い価額を付する。また、時価の著しい下落により評価額の引下げが求められる場合の時価は、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額により、実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合の実質価額は、外国通貨による実質価額を取得時の為替相場により円換算した額による。

3 たな卸資産及び有形固定資産等

 たな卸資産、有形固定資産等の非貨幣性資産で取得原価で記録されているものについては、取得時の為替相場による円換算額を付する。取得原価以外の価額が付されているたな卸資産については、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。

 なお、たな卸資産について低価基準を適用する場合には、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額と、外国通貨による取得価額を取得時の為替相場により円換算した額(前事業年度以前に評価減を行った場合には当該円換算額)のうちいずれか低い価額を付する。また、時価の著しい下落により評価額の引下げが求められる場合の時価は、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額による。

4 収益及び費用

 収益及び費用(収益性負債の収益化額及び費用性資産の費用化額を除く。)については、計上時の為替相場による円換算額を付する。ただし、期中平均相場によることも妨げない。(注12)

 前受金、前受収益等の収益性負債の収益化額については、当該負債の発生時の為替相場による円換算額を付し、たな卸資産、有形固定資産等の費用性資産の費用化額については、当該資産の取得時の為替相場による円換算額を付する。当該資産に取得原価以外の価額が付されている場合には、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。

5 在外支店の外貨表示財務諸表項目の換算の特例

 在外支店の外国通貨で表示された財務諸表項目の換算にあたり、その長期金銭債権債務及び非貨幣性項目の額に重要性がない場合には、すべての財務諸表項目(支店における本店勘定等を除く。)について決算時の為替相場による円換算額を付する方法を適用することができる。この場合において、損益項目については期中平均相場によることも妨げない。(注12)

6 換算差額の処理

 換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。

三 在外子会社等の財務諸表項目

 連結財務諸表の作成又は持分法の適用にあたり、外国にある子会社又は関連会社又は関連会社の外国通貨で表示されている財務諸表項目の換算は、次の方法による。

1 資産及び負債

 資産及び負債については、決算時の為替相場による円換算額を付する。ただし、親会社に対する債権債務の換算については、親会社が換算に用いる為替相場による。この場合に生じる差額は為替換算調整勘定として処理する。

2 資本

 親会社による株式の取得時における資本に属する項目については、株式取得時の為替相場による円換算額を付する。

 親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目については、当該項目の発生時の為替相場による円換算額を付する。

 

3 収益及び費用

 収益及び費用については、期中平均相場又は決算時の為替相場による円換算額を付する。ただし、親会社との取引による収益及び費用の換算については、親会社が換算に用いる為替相場による。この場合に生じる差額は当期の損益として処理する。(注12)

4 換算差額の処理

 換算によって生じた換算差額は、為替換算調整勘定に計上し、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。

外貨建取引等会計処理基準注解 改訂版

注1 外貨建取引の範囲について

 外貨建取引とは、売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引をいう。

 外貨建取引には、(イ)取引価額が外国通貨で表示されている物品の売買又は役務の授受、(ロ)決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入又は貸付、(ハ)券面額が外国通貨で表示されている社債の発行及び(ニ)外国通貨による前 渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入等が含まれる。

 なお、国内の製造業者等が商社等を通じて輸出入取引を行う場合であっても、当該輸出入取引によって商社等に生ずる為替差損益を製造業者等が負担する等のため実質的に取引価額が外国通貨で表示されている取引と同等とみなされるものは、外貨建取引に該当する。

注2 取引発生時の為替相場について

 取引発生時の為替相場としては、取引が発生した日における直物為替相場又は合理的な基礎に基づいて算定された平均相場、例えば取引の行われた月又は週の前月又は前週の直物為替相場を平均したもの等、直近の一定期間の直物為替相場に基づいて算出されたものによる。ただし、取引が発生した直近の一定の日における直物為替相場、例えば取引の行われた月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の直物為替相場によることも妨げない。

注3 外貨建金銭債権債務について

 外貨建金銭債権債務とは、契約上の債権額又は債務額が外国通貨で表示されている金銭債権債務をいう。

注4 為替予約等について

 為替予約等には、通貨先物、通貨スワップ及び権利行使が確実に見込まれる買建て通貨オプションが含まれる。

注5 為替予約の方法について

 個別予約は外貨建取引ごとに個々に為替予約を付すものをいい、包括予約は

外貨建取引の決済約定の状況に応じ、週又は月等の一定期間ごとの決済見込額の全部又は一部について包括的に為替予約を付すものをいう。

注6 外貨建金銭債権債務等に係る為替予約について

 外貨建て長期金銭債権債務等について為替予約が付されている場合(当該為替予約が物品の売買又は役務の授受に係る外貨建金銭債権債務に対して、取引発生時以前に締結されてものである場合を除く。)には、当該金銭債権債務等の取得時又は発生時の為替相場(決算時の為替相場を付した場合には当該決算時の為替相場)による円換算額と為替予約による円貨額との差額は、為替予約日に属する期から決済日の属する期までの期間にわたって合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。ただし、当該差額について重要性が乏しい場合には、当該差額を予約日又は決済日の属する期の損益として処理することができる。

 外貨建短期金銭債権債務等について為替予約が付されている場合(当該為替予約が物品の売買又は役務の授受に係る外貨建金銭債権債務に対して、取引発生時以前に締結されたものである場合を除く。)には当該金銭債権債務等の取得時又は発生時の為替相場(決済時の為替相場を付した場合には当該決算時の為替相場)による円換算額と為替予約による円貨額との差額のうち、予約時までに生じている為替相場の変動による額は予約日の属する期の損益として処理し、残額は予約日の属する期及び決済日の属する期に合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。ただし、当該残額を予約日の属する期の損益として処理することができる。

 取得時又は発生時の為替相場による円換算額と為替予約による円貨額との差額のうち次期以降に配分される額は、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。

注7 外貨建金銭債権債務等に係る通貨スワップについて

 外貨建長期金銭債権債務等について通貨スワップが契約されている場合には、当該金銭債権債務等の取得時又は発生時の為替相場(決算時の為替相場を付した場合には当該決算時の為替相場)による円換算額と当該金銭債権債務等に付すべき円仮額との差額は、当該通貨スワップ契約をした日の属する期からスワップ期間満了日の属する期までの期間にわたって合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。ただし、当該差額について重要性が乏しい場合には、当該差額を契約日又は決済日の属する期の損益として処理することができる。

 外貨建短期金銭債権債務等について通貨スワップが契約されている場合には、当該金銭債権債務等の取得時又は発生時の為替相場(決算時の為替相場を付した場合には当該決算時の為替相場)による円換算額と当該金銭債権債務等に付すべき円貨額との差額のうち、スワップ契約時までに生じている為替相場の変動による額は契約日の属する期の損益として処理し、残額は当該通貨スワップ契約をした日の属する期及びスワップ期間満了日の属する期に合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。ただし、当該残額を契約日の属する期の損益として処理することができる。

 通貨スワップ契約に係る受取円貨額合計又は支払円貨額の合計のうち、利息に相当する部分の金額については、合理的な方法により処理する。

 取得時又は発生時の為替相場による円換算額と当該金銭債権債務等に付すべき円貨額との差額のうち次期以降に配分される額は、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。

注8 包括予約の振当方法について

 取引時に包括予約を振り当てる場合には、週又は月等の一定期間を基礎として合理的な方法により個々の外貨建取引に振り当てる。

 決算時における包括予約は、原則として外貨建金銭債権債務(決済時における円貨額が確定しているのを除く。)に週又は月等の一定期間を基礎として合理的な方法により振り当てる。ただし、包括予約の振当方針が明らかである場合には、当該方針に基づいた方法により決算時の外貨建金銭債権債務以外に振り当てることも妨げない。

注9 決算時の為替相場について

 決算時の為替相場としては、決算日の直物為替相場のほか、決算日の前後一定期間の直物為替相場に基づいて算出されて平均相場を用いることができる。

注10 外貨建短期金銭債権債務及び外貨建長期金銭債権債務について

 外貨建短期金銭債権債務とは、決算日の翌日から起算して一年以内に回収又は弁済の期限が到来する外貨建金銭債権債務をいい、外貨建長期金銭債権債務とは、決算日の翌日から起算して一年をこえて回収または弁済の期限が到来する外貨建金銭債権債務をいう。

 なお、同一通貨建の外貨建長期金銭債権債務等から生ずる為替相場の変動の影響を減殺する目的で保有していると認められる外貨建短期金銭債権債務で、継続的な契約期間の更新又は長期契約への変更が確実に見込まれるものは、換算上、外貨建長期金銭債権債務として扱う。

注11 外貨建長期金銭債権債務等に係る重要な為替差損について

 外貨建長期金銭債権債務等に係る重要な為替差損の認識にあたって、同一通貨建ての外貨建長期金銭債権債務等に係る為替差益と相殺する場合には、当該同一通貨建ての外貨建長期金銭債権債務等について決算時の為替相場による円換算額を付し、為替差損と相殺後の金額を為替差損として処理する。

注12 期中平均相場について

 収益及び費用の換算に用いる期中平均相場には、当該収益及び費用が帰属する月又は半期等を算定期間とする平均相場を用いることができる。

  

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