外貨建取引等会計処理基準

          (昭和58年12月22日改正 大蔵省企業会計審議会)

一 外貨建取引

1 外貨建取引の円換算

 外貨建取引は、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録しなければならない。ただし、本邦通貨による保証約款又は為替予約が付されていることによりその取引に係る外貨建金銭債権債務の決済時における円貨額が確定している外貨建取引については、当該円貨額をもって記録するものとする。(注1)(注2)(注3)(注4−2)

2 決算時の処理

(1) 換算方法

 外国通貨、外貨建金銭債権債務及び外貨建有価証券については、決算時において次の処理を行う。(注4)

@ 外国通貨

 外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額を付する。

A 外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。以下同じ)

 外貨建短期金銭債権債務については、決算時の為替相場による円換算額を付する。ただし、外貨建自社発行社債のうち転換請求期間満了前の転換社債については、発行時の為替相場による円換算額を付する。(注5)

 外貨建長期金銭債権債務については、取得時又は発生時の為替相場による円換算額を付する。(注5)

 本邦通貨による保証約款又は為替予約が付されていることにより、決済時における円貨額が確定している外貨建金銭債権債務については、当該円貨額を付する。(注4−2)

B 外貨建有価証券

 外貨建保有社債その他の債券については、原則として、取得時の為替相場による円換算額を付する。(注4−2)ただし、決算日の翌日から起算して1年以内に償還される外貨建保有社債その他の債券(転換請求期間満了前の転換社債を除く。)については、決算時の為替相場による円換算額を付する。(注6)

 外貨建保有株式については、原則として、取得時の為替相場による円換算額を付する。(注6)

(2) 換算差額の処理

 決算時における換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。

3 決算に伴う損益の処理

 外貨建金銭債権債務の決済(外国通貨の円転換を含む。)に伴って生じた損益は、当期の為替差損益として処理する。

4 財務諸表の注記

 外貨建長期金銭債権債務その他これに準ずる項目については、決算時の為替相場による円換算額を貸借対照表に注記しなければならない。

二 在外支店の財務諸表項目

 本支店合併財務諸表を作成するにあたり、外国にある支店の外国通貨で表示されている財務諸表項目の換算は、次の方法によるものとする。(注7)

1 通貨及び金銭債権債務

 通貨及び金銭債権債務については、本店と同様の方法による円換算額を付する。

2 有価証券

 有価証券については、本店と同様の方法による円換算額を付する。(注6)

3 たな卸資産及び有形固定資産等

 たな卸資産、有形固定資産等の非貨幣性資産で取得原価で記録されているものについては、取得時の為替相場による円換算額を付する。取得原価以外の価額が付されているたな卸資産については、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。(注8)

4 収益及び費用

 収益及び費用(収益性負債の収益化額及び費用性資産の費用化額を除く。)については、計上時の為替相場による円換算額を付する。ただし、期中平均相場によることも妨げない。

 前受金、前受収益等の収益性負債の収益化額については、当該負債の発生時の為替相場による円換算額を付し、たな卸資産、有形固定資産等の費用性資産の費用化額については、当該資産の取得時の為替相場による円換算額を付する。取得原価以外の価額が付されている場合には、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。

5 換算差額の処理

 換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。

三 存外子会社等の財務諸表項目

 連結財務諸表の作成又は持分法の適用にあたり、外国にある子会社又は関連会社の外国通貨で表示されている財務諸表項目の換算は、次の方法によるものとする。(注9)

1 通貨及び金銭債権債務

 通貨及び短期金銭債権債務については、決算時の為替相場による円換算額を付し、長期金銭債権債務については、取得時又は発生時の為替相場による円換算額を付する。

2 有価証券

 有価証券については、取得時の為替相場による円換算額を付し、取得原価以外の価額が付されているものについては、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。

3 たな卸資産及び有形固定資産等

 たな卸資産、有形固定資産等の非貨幣性資産で取得原価で記録されているものについては、取得時の為替相場による円換算額を付する。取得原価以外の価額が付されているたな卸資産については、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。

4 収益及び費用

 収益及び費用(収益性負債の収益化額及び費用性資産の費用化額を除く。)については、計上時の為替相場による円換算額を付する。ただし、期中平均相場によることも妨げない。

 前受金、前受収益等の収益性負債の収益化額については、当該負債の発生時の為替相場による円換算額を付し、たな卸資産、有形固定資産等の費用性資産の費用化額については、当該資産の取得時の為替相場による円換算額を付する。取得原価以外の価額が付されている場合には、当該価額が付されたときの為替相場による円換算額を付する。

5 当期純利益及び期末留保利益

 外貨表示財務諸表上の当期純利益及び期末留保利益については、決算時の為替相場による円換算額を付する。

6 換算差額の処理

 換算によって生じた換算差額は、為替換算調整勘定に計上し、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。

           外貨建取引等会計処理基準注解

          (昭和58年12月22日改正 大蔵省企業会計審議会)

注1 外貨建取引の範囲について

 外貨建取引とは、売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引をいう。

 外貨建取引には、(イ)取引価額が外国通貨で表示されている物品の売買又は役務の授受、(ロ)決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入又は貸付、(ハ)券面額が外国通貨で表示されている社債の発行及び(ニ)外国通貨による前 渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入等が含まれる。

 なお、国内の製造業者等が商社等を通じて輸出入取引を行う場合であっても、当該輸出入取引によって商社等に生ずる為替差損益を製造業者等が負担する等のため取引価額が外国通貨で表示されている取引は、外貨建取引に該当する。 注2 外貨建金銭債権債務について

 外貨建金銭債権債務とは、契約上の債権額又は債務額が外国通貨で表示されている金銭債権債務をいう。

注3 取引発生時の為替相場について

 取引発生時の為替相場としては、取引が発生した日における直物為替相場又は合理的な基礎に基づいて算定された平均相場、例えば取引の行われた月又は週の前月又は前週の直物為替相場を平均したもの等、直近の一定期間の直物為替相場に基づいて算出されたものとする。ただし、取引が発生した日の直近の一定の日における直物為替相場、例えば取引の行われた月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の直物為替相場によることも妨げない。

注4 決算時の為替相場について

 決算時の為替相場としては、決算日の直物為替相場のほか、決算日の前後一定期間の直物為替相場に基づいて算出された平均相場を用いることができる。 注4−2 外貨建長期金銭債権債務等に係る為替予約について

 外貨建長期金銭債権債務等について為替予約が付された場合における取得時又は発生時の為替相場による円換算額と為替予約による円貨額との差額は、当該為替予約を行った日の属する期から決済日の属する期までの期間にかわって合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。ただし、当該差額について重要性が乏しい場合には、当該差額を予約日又は決済日の属する期の損益として処理することができる。

 取得時又は発生時の為替相場による円換算額と為替予約による円貨額との差額のうち次期以降に配分される額は、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。

注5 外貨建短期金銭債権債務及び外貨建長期金銭債権債務について

 外貨建短期金銭債権債務とは、決算日の翌日から起算して1年以内に回収又は弁済の期限が到来する外貨建金銭債権債務をいい、外貨建長期金銭債権債務とは、決算日の翌日から起算して1年をこえて回収又は弁済の期限が到来する外貨建金銭債権債務をいう。

注6 外貨建有価証券等に対する低価基準等の適用について

 外貨建有価証券及び在外支店が保有する有価証券について低価基準等を適用する場合には、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額と、本邦通貨による簿価(在外支店の保有する有価証券については、取得時の為替相場により円換算した額)のうちいずれか低い価額を付する。

注7 在外支店の外貨表示財務諸表項目の換算に対する決算日レート法の適用について

 在外支店の外国通貨で表示された財務諸表項目の換算にあたり、その長期金銭債権債務及び非貨幣性項目の額に重要性がない場合には、すべての財務諸表項目(支店における本店勘定等を除く。)について決算時の為替相場による円換算額を付する方法を適用することができる。この場合において、換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理するものとする。

注8 在外支店のたな卸資産に対する低価基準等の適用について

 在外支店が保有するたな卸資産について低価基準等を適用する場合には、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額と、取得時の為替相場により円換算した額のうちいずれか低い価額を付する。

注9 存外子会社等の外貨表示財務諸表項目の換算に対する決算日レート法の適用について

 在外子会社等の外国通貨で表示された財務諸表項目の換算にあたり、その長期金銭債権債務及び非貨幣性項目の額に重要性がない場合には、すべての財務諸表項目(資本勘定等を除く。)について決算時の為替相場による円換算額を付する方法を適用することができる。この場合において、換算によって生じた換算差額は為替換算調整勘定に計上し、貸借対照表の資産の部又は負債の部に記載するものとする。 

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